1.高い関心を集めている”オーバープロネーション(過剰回内)”
オーバープロネーション(過剰回内、過回内)という言葉を私が最初に耳にしたのは、ランニングシューズを選んでいるときでした。その後、5-6年たっていますが、今ではSNSなどでもタグに用いる方も増えています。そのような投稿の内容は、ランニングに限らず、姿勢を気にされている、足の調子が悪いといったことまで多岐にわたります。
後述しますが、オーバープロネーションは、足の痛みや不具合のみならず、足より上の膝、股関節、腰、背中や首の痛みや不具合、そして頭痛などといった、一見すると足と全く関係なさそうにみえる諸症状の遠因となっていることがあるのです。そのため、ますます関心が高まっているトピックスなのです。
しかし、そもそもオーバープロネーション(過剰回内)って何なんだろう?と思っているかたも多いようで、実際、多くの方からご相談を受けます。そこで、少し専門的な話も交えながら説明をしたいと思います。
2.オーバープロネーション(過剰回内)とは?
オーバープロネーション(過剰回内)とは、かかと周りの関節の動きが大きすぎる足の状態を指します。具体的には、距骨下関節(きょこつかかんせつ、STJ)という関節の動きが直接関係します。
距骨下関節(STJ)とは足首に存在する距骨(きょこつ)とかかとの骨である踵骨(しょうこつ)が形成する関節です。
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距骨下関節は、足と下腿(かたい)とを連結する重要な役割を果たしています。また、足のアーチが動きの中で適切に形成されるかを決める上でも重要な役割を果たしているのです。
後者の重要な役割を果たす関節がもうひとつあります。それは横足根関節(おうそっこんかんせつ)です。
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横足根関節はかかと部分と前足部をつなぐ個所に位置する関節です。
かかと周りの関節である距骨下関節が過剰に動いてしまうことにより、結果として、横足根関節の結束が緩くなり、動きの中でアーチが適切に形成されない、これがオーバープロネーション(過剰回内)の本質です。
3.距骨下関節のポジションと横足根関節の可動域
距骨下関節の回内(かかとが内側に倒れる動き)・回外(かかと外側に倒れる動き)は、ヒトが二足歩行で生活する上で重要な働きをしています。
地面に足が接地した瞬間、距骨下関節が回内し衝撃を吸収するとともに骨組みをルーズ(関節の組付けを緩く)にして複雑な地表面に足をフィットさせる役割を果たします。その後、蹴りだすまでの間、徐々に回外し骨組みをロックする(関節の結束を強固にする)ことにより、蹴りだす時に効率よく地面に力を伝えられるように機能します。
回外位では距骨の運動軸と踵骨の運動軸がクロスするため、横足根関節の動きは抑制されれます。
他方、回内位では、距骨と踵骨の関節面はほぼ同じ高さにあり、運動軸が平行になるため、前足部とかかとをつなぐ関節である横足根関節は緩んだ状態となり、動きが大きくなります。
この状況は、きつく絞ったタオル(距骨と踵骨が捻じれた回外位)では、タオルが棒のように硬くて可動域が狭くなることに対して、緩んだタオルの状態(距骨と踵骨が平行な回内位)では、剛性が低下し、横足根関節の可動域が大きくなる、というように理解いただけます。このように、距骨下関節のポジションは足全体の柔軟性に大きく関与しているのです。
オーバープロネーション(過剰回内)の足は、距骨下関節の動きが過剰であること、それに連携して動く横足根関節の動きが大きい、この二つの特徴が重なりあった足であると言えます。なお、ここでは横足根関節の動きについて説明しましたが、親指や小指の関節についても、距骨下関節(STJ)が回内のポジションだと可動域が大きくなり、回外のポジションだと可動域は小さくなります。このことから、距骨下関節のポジションは、足全体の柔軟性に大きく関与していると言えます。
4.かかとはどこまで内側に傾くのか?
オーバープロネーション(過剰回内)の状態の足が示す現象として、かかとが過剰に内側に傾いてしまうという現象があります。実はこの傾き度合いについては、諸説があり、いろいろなメディアでの解説されている図は過度な表現になっているのではないか?という見解もあります。
Northwest Podiatric Laboratory(NWPL)社の創業メンバーであり、理論的な支柱でもあるDr.Chrisは、かかとの骨(踵骨、しょうこつ)はそれほど内側に傾くことはない、という理論を展開しています。いずれにしても、かかと周りの骨の結束が弱く、程度の差こそあれ、着地の瞬間にかかとの骨が内側にかたむくという現象が、オーバープロネーション(過剰回内)の足が示す現象として観察することができます。
5.MTJの可動域の大きさがアーチの高さを左右する
上記の写真の下段は足のアーチの高さを撮影したものです。Cは典型的なオーバープロネーション(過剰回内)の足で荷重状態では土踏まずは形成されない状態です。
Cはオーバープロネーションの状態になっていることを主因として重度の外反母趾に悩んでいました。
以下の写真で分かる通り、足のアーチの高さを決定しているのは、MTJの可動域の大きさなのです。MTJの可動域が過度に大きいと動きの中でアーチが適切に形成されずに、様々な不具合や痛みの原因となりえます。
Cの足は左手でカカトを押さえて右手でゆっくりと捻ると、ほぼ垂直まで曲がります。この状態は足が浮いた状態ですが、このまま足の裏が地面につくところを想像してみてください。足の裏がぺたーっと地面についてしまう状態、つまり、オーバープロネーション(過剰回内)の状態になることがご理解いただけると思います。
6.MTJロックが足の動きの最適化のための重要な要因
また、MTJの(内側への)可動域が大きい足は概して、外側へのねじれも大きくなります。この外側へのねのじれが大きいと、柔らかい足から硬い足へ移行する際に障害となります。外側へのねじれが小さい足は、MTJロックがかかりやすい足です。
足の動きの中で、MTJがしっかりロックされる足(例えばAの足)は、例えば歩行中にもきちんとアーチが形成されますが、Cの足はMTJのロックがかかりにくい足のため、適切なサポートがないとアーチが適切に形成されず外反母趾に限らず様々な足の不具合の原因とります。
7.オーバープロネーション(過剰回内)と偏平足・開帳足
足の状態がオーバープロネーション(過剰回内)であると、かかとが内側に倒れやすく、アーチが形成あれにくい、と上述いたしました。その結果として、オーバープロネーション(過剰回内)の足が示す特徴として、偏平足や開帳足が上げられます。但し、オーバープロネーション(過剰回内)の足が必ずしも偏平足や開帳足となる、というわけではないことにも留意が必要です。
偏平足(へんぺいそく)
体重がかかっているときに、足の土踏まずが床についてしまっている状態の足
開張足(かいちょうそく)
体重がかかるとつまさき全体が異常に広がってしまう足。
8.オーバープロネーション(過剰回内)がもたらすトラブル
オーバープロネーション(過剰回内)がもたらすトラブルは、足にとどまらず、足より上の身体の様々なトラブルの原因となることが知られてています。
足関連のトラブル
距骨下関節の結束が緩く、過度に内側に倒れ込んでしまい、結果として、横足根関節が緩んでしまうことにより引き起こされる関連のトラブルは以下のようなものが上げらます。それぞれ痛みが生じる個所がことなるので、異なる原因があるのでは?と想像されるかもしれませんが、元の原因はオーバープロネーション(過剰回内)であることが多くあります。
- 外反母趾(がいはんぼし)
- 内反小趾(ないはんしょうし)
- 足趾屈曲変形(そくしくっきょくへんけい、ハンマートゥ)
- 足底筋膜炎(そくていきんまくえん)
- 強剛母趾(きょうごうぼし)
- 中足骨骨頭痛(ちゅそくこつこつとうつう)
- 種子骨炎(しゅしこつえん)
- モートン神経腫(もーとんしんけいしゅ)
- 後脛骨筋腱機能不全症(こうけいこつきんけん きのうふぜんしょう、PTTD)
- タコ(胼胝:べんち)・ウオノメ(鶏眼:けいがん)
- シンスプリント
膝関連のトラブル
足がオーバープロネーション(過剰回内)の状態であることが原因となり、膝関節が捻じれるような状態となることによって、膝関連の下記のトラブルが生じることが多くあります。
- ランナーズニー(ランニングによる膝関節周辺のスポーツ障害の総称)
- 腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)
- 鵞足炎(がそくえん)
- 膝蓋軟骨軟化症(しつがいなんこつなんかしょう)
- 半月板関連の障害
- 十字靭帯関連の障害
- 変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)
股関節・腰・背中・肩・首および頭部関連のトラブル
足がオーバープロネーション(過剰回内)の状態であることが原因となり、身体の各部位にねじれが生じ、そのねじれが連鎖することにより、以下のようなトラブルが生じることが分かっています。
- 変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)
- 腰痛
- 背中の痛み
- 肩の痛み・重度の肩こり
- 首の痛み
- 頭痛
- 姿勢の悪化
- 重度の歯ぎしり・食いしばり
9.オーバープロネーション(過剰回内)の原因を理解した本質的な対応は?
上記の強度の外反母趾で悩んでいるCのような足に対して、土踏まずを持ち上げてアーチをつくればよいのでは?ということで、実際そのようなインソールやツールも多数存在します。他方、私たちの答えはNOです。Cはそのようなインソールも含めたいろいろな対応策を試しましたが、効果はありませんでした。
また、外反母趾への対応として提案される足指のトレーニングなどによって、オーバープロネーションは改善するのでしょうか?
すがまた接骨院の院長 菅俣弘道さんのコメントを引用いたします。
一般的に推奨されているのがエクササイズバンドやチューブを用いた後脛骨筋のトレーニングです。
また、床に敷いたタオルを足の指でたぐり寄せるタオルギャザーや足の趾でグーパーするようなエクササイズ、立った状態で踵を上げ下げするようなエクササイズも有効とされています。
2020年3月28日の読売新聞にも書かせて頂きましたが、加齢や大きすぎる靴を履き続けた事による筋力低下や柔軟性の低下が原因で起きる過回内足・オーバープロネーションの足であればトレーニングの効果を期待することは出来ると思います。
しかし、過回内足・オーバープロネーションの足で筋力の低下・柔軟性の低下だけで起きているものは少なく、骨構造・関節機能構造上の問題により起きているものがほとんどであるため、トレーニングだけで過回内足・オーバープロネーションの足を改善させることはなかなか難しいことと思います。
出所:すがまた接骨院ウェブサイト「過回内足(オーバープロネーション)とスポーツの関係性とは! 対処方法もご紹介!!」
大事なのは、形を作ることではなく、動きの中でアーチが形成されるように動きを導くこと、すなわち適切な範囲でMTJロックがかかるようなサポートを提供することなのです。
NWPL社のファンクショナルオーソティックス®やファンクショナルインソールの最大の特徴は、正にこのMTJロックのサポートにあります。これはアメリカ足病医学の下肢バイオメカニクス理論に基づいたものです。
上記のDは、NWPL社のフラッグシップモデルであるファンクショナルオーソティックス®であるNorthwest Superglass®を使用することで、外反母趾の痛みから解放されました。
足やカラダの問題に限らず、いろいろな問題への対応と同じで、目に見えている現象の本当の原因を、何故?何故?何故?と探求して、その真の原因に対応するための打ち手が問題解決のカギとなるのです。ROOT CAUSE、まさに木の根っこにある原因に目を向けることが大切なのです。
理論上のご説明は上記の通りですが、実際にはひとつのトラブルの背景には複数の要因が潜んでいることが大半です。足のトラブルでお悩みの方は、NWPL社のプロダクトを熟知した専門家に是非ご相談をしてください。NWPL社のプロダクトの試し履きも可能です。是非、ご自身でNWPL社のプロダクトがもたらす大きなインパクトをご体感いただければと思います。
NWPL社のファンクショナルオーソティックス®やファンクショナルインソールが目指すところは、過剰回内(オーバープロネーション)などのように足のアライメントが崩れている状態を是正することにより、足部に生じる痛みや不具合のバイオメカニクスの観点からの誘因となる動きを制御することにあります。
他方、足部に生じる痛みや不具合は様々な要因が絡み合って生じています。例を挙げると、靴、地面の状況、運動量、体重、運動に関する技術、体外から体にかかる力、筋力のバランス、柔軟性の欠如などです。結果として、これらを原因として連鎖的に生じる足部以外の他の身体の部位の痛みや不具合も同様に複合的な要因が複雑に絡み合って生じることとなります。
このような特徴を持つNWPL社のファンクショナルインソールおよびファンクショナルオーソティックス®はですが、その機能を最大限発揮するためには、お一人おひとりの足の状態を適切に評価するこことが、重要となります。
そのために、日本全国各地にNWPL社のファンクショナルインソールおよびファンクショナルオーソティックス®のことを知り尽くした、NWPL社に認定の足とカラダのプロフェッショナルが存在します。それがTEAM NWPLです。
「痛みのない生活」、「健康な生活」、「美しく生きる」、そして、「運動を楽しむ」を実現されたい方は、是非NWPL社認定の足の専門家にご相談ください。皆様のお話をお伺いして一人ひとりの状況にあった最適なご提案を致します。
ファンクショナルインソールって世の中に沢山あるインソールと何が違うの?という疑問にお答えする動画はこちら!