カラダの痛み・コリ・不具合・スポーツパフォーマンスに伸び悩む9割以上の人が足元の見直しで解決
どこへ行っても足腰の痛みがなかなかよくならない、うまく歩けない、腕が上がらない、よく眠れない、歯ぎしりがひどい、スポーツのパフォーマンスの伸びがあと一歩足りない……。そんな人たちが駆け込む施術院がある。それが長野市にある『SONA高田』だ。噂が噂を呼び、体の悩みをかかえる人たちが助けを求めてここを訪れる。そんな人たちの悩みにじっと耳を傾け、穏やかに質問を重ねながら治療する山岸茂則氏。いったい彼はいかにして、多くの人に”すがられる”施術家になったのか。
山岸氏「中学生のとき、すでに理学療法士になりたいと思っていたんです。母が理学療法士の助手をしていて、その職場で母の仕事を終わるのを待っていた子ども時代、私にとってそこは遊び場でもありました。
患者さんが、体がよくなったことを嬉しそうに母に話しに来る姿を見て、子ども心に、”人に喜ばれる仕事っていいな”と思い、そこからは一本道。東京の専門学校を卒業し、地元長野県の飯山赤十字病院リハビリテーション科で22年勤務しました。
ところが経験を重ねるうちに、患者さんのリクエストに応えきれていない、自分も満足できないと悩む時間が増えていったので、少しずつ方向転換をし始めました。一般的にいいといわれる治療法も大切だけれど、もしかしたら違う見方もあるんじゃないかと。それで行きついたのがバイニーアプローチという独自の治療法です」
“バイニーアプローチ”、聞いたこともない、なんだか難しそう……と思う人もいるだろう。これは山岸氏と舟波真一氏によって確立したオリジナルの治療法で、生体力学の「バイオメカニクス」と脳科学の「ニューロサイエンス」を掛け合わせた造語。……ますます難しいような気がするが、わかりやすく山岸氏に説明してもらおう。
山岸氏「簡単にいうと、体にいい刺激を入れることで、無駄な緊張をとりながら筋肉の働きをよくするための治療で、穏やかに体を包み込んでゆらゆらする施術方法です。硬くなった筋肉を指で押してほぐしたり、ストレッチをしたり、関節を鳴らしたりという施術とは全く違うアプローチです」
「えっ?ゆらゆら揺らすだけなのに、体の調子がよくなるの?」と思った人、いますよね。どこでもいいから体をゆらゆらするという単純なものではなく、実はこの”ゆらゆら”にはとても深い意味があるだ。
山岸氏「体を左右に同じリズムで何百回とゆらゆらすることで、膜組織というものを柔らかくします。膜組織とは、骨や筋肉、内臓がバラバラにならないように全身を覆っている膜のことで、1枚のボディスーツを着ているようなイメージです。膜組織はどこか一か所が硬くなると、そこに引っ張られてしまい、他の箇所の膜組織も引っ張られたりねじれたりします。それを柔らかくするために体をゆらゆらすることで、2つの変化が起こります。
ひとつは、筋肉の動きがよくなること、ふたつ目は、緩んでいる靭帯や関節が締まることです。関節や靭帯が締まると、関節の可動域が上がってスムーズに動けるようになったり、動きに安定感が出たりということが起こります。この2つの変化が出ると、自律神経のバランスも整うことも私たちの経験から確認できています。
筋肉の動きがよくなり、関節や靭帯が締まると、動きが変わり、姿勢が変わり、痛みが減ったり、スムーズに動けてスポーツのパフォーマンスが上がったりすることにもつながります。反対に、膜組織が硬いと、神経や血管を圧迫してしまい、神経からの指令が筋肉に届かずスムーズに動けないとか、血流障害を起こします。というわけで、施術でまず行うのは、硬くなっている膜組織をゆるめるために、体を頭、腰、足などをゆらゆらして刺激を入れます。ゆらゆらする場所は必ずしも症状で出ている場所だけとは限りません。股関節が痛くても、胸のまわりをほぐすことだってあります」
治療やリハビリというと、例えば肩こりなら肩をもみほぐす、歩くときに左脚の力がうまく入らず、アンバランスになるようなら、左脚を鍛える。症状がある場所をほぐす、弱い場所を集中的にトレーニングするという方法を想像しがちだが、どうやら少し違うらしい……。
山岸氏「以前は弱い場所を意識的にトレーニングするという方法を中心に行っていました。しかし、患者さんへのトレーニングの負担は大きい。しかもトレーニング直後は効果が出ていても、それをトレーニング以降に持ち越すことができない、というのが私の悩みのひとつでもありました。そこで意識的なトレーニングではなく、無意識に動けるようになればいいのでは、という仮説を立てたのです。
私たちの体には400もの筋肉がありますが、それらすべてを意識して動かすことは無理ですよね。だから人間の体は無意識に動けるしくみができているんです。反対に、無意識に動けないところは、膜組織が硬いことで脳からの指令が届きづらくなっているところ。そこにいい刺激が入ることが神経へのスイッチとなり、筋肉がよく動くようになる、ということが様々な実験を繰り返すなかで実証できたのです。
ここでいう”いい刺激”とは、不調の引き金になっている硬い膜組織に与えるゆらゆらすることなんです」
つまり、体にいい刺激になる”ゆらゆら”は、オートマチックに、無意識に筋肉の動きがよくなるきわめて重要なスイッチとなる。これが「バイニーアプローチ」の根底にある考え方なのだ。
山岸氏のバイニーアプローチによれば、膜組織を柔らかくすることで、筋肉がよく働くこと、関節や靭帯が締まってくることという2つの変化が期待できる。しかし実は足の関節や靭帯が締まらない人が患者さんの約9割にも上り、そこが締まらない限りは症状の改善は難しいと言う。
山岸氏「足の関節や靭帯が緩んでいるというのは、例えば右足が内側に倒れ込み、土踏まずがつぶれてしまっている状態のこと。するとどうなるのか、脳から背骨を経由して足まで続く神経や、動脈や静脈といった血管を、土踏まずで踏みつぶしてしまいます。すると右半身の神経は引っ張られて、右の股関節が痛い、右肩が上がらない、右の首が動きにくいといったことがおこります。
どんなに膜組織を緩めても、足にも原因があれば筋肉はいい動きにはならないです。そこで、施術と医療用足底挿板のファンクショナルオーソティックス®である『Northwest Superglass®』を私のところでは改善策のひとつとして使っています。『Northwest Superglass®』単体でというよりは、多くの場合、施術と併用することで、効果が効率的に現れるための前提条件を整えるためのツールとして、初期段階にご提案しています。
医療用足底挿板とは、処方されたカスタムメイド・インソールのことです。では、なぜ医療用足底挿板なのか、それは、足の骨の位置を正すことで、靭帯や関節が締まり圧迫された神経や血管をほどくことができることと、足裏からいい刺激を入れることができるからです。
足裏は常に床から刺激を受けているので、それを利用していい刺激を入れ続け、靭帯や関節を締めて筋肉の動きをよくすることが可能になるからです」
では筋肉の働きがよくなると、具体的にはどのような症状の人にとって有効だったのだろうか。
山岸氏「驚くほど幅広い症例に有効でした。例えば不眠や歯ぎしり、生理痛、腰痛、ひざ痛、便秘、冷え、むくみなどありとあらゆる症状に有効でした。ですから私のところに来てくださる方は赤ちゃんから90歳までと幅広いです。」
この後、実際に股関節痛で来てくれた小学6年生の永井君がどのような経過をたどって、今や所属するサッカーチームには欠かせないミッドフィルダーになったのか、紹介しよう。
健伍くん「小学3年生の頃、左脚のキックが弱くて集中的に練習をしたんです。そうしたら翌日、ズボンをはいたときに、”痛い”という感覚が左脚にあり、初めて違和感を覚えました。それが山岸先生に診てもらったきっかけです」
健伍くんのお父さん「健伍が受けた治療は、股関節ではなく、まずは胸周り、そして足でした。胸周りは膜組織が硬いため神経を圧迫し、いびきをかく、左脚がいい動きをできる信号が送れず力が出なくて左脚が弱く、痛みが出ると説明されて妙に納得しました。
つまり、体はつながっていて股関節が痛いからと言って原因がそこにあるとは限らない。健伍の場合は出産のときの影響で、首のあたりにねじれがあって、それを柔らかくして神経の圧迫を取り除いたことで、いびきはすぐに治り、関節痛も徐々に回復。
もう一つ、左足が不安定だったことも関係しているようです。ですから治療だけでは、すべては改善しないと判断してNorthwest Superglass®を使用することにしました。そのおかげで、左脚の股関節もよくなり、左右の脚に均等に力が入るようになって、パフォーマンスが上がったように思います」
健伍くん「はじめは1週間、通学用の靴に入れ、その後はスパイク、トレーニング用のシューズ、今では上履きにも入れています。痛みは治療のときにすぐになくなり、インソールを入れた瞬間に左脚に力が入るのがわかりました。
そして一番変化を感じたのはドリブルのときの姿勢。お腹にも力が入るようになり、姿勢がよくなったので、チームメイトの動きがよく見えるようになって。そのときはフォワードをしていたのですが、その後、自分がずっとやりたかったミッドフィルダーができるようになったのも姿勢がよくなったおかげです」
山岸茂則(やまぎししげのり)さん
専門理学療法士(運動器系)。『SONA高田』院長。専門学校卒業後、飯山赤十字病院リハビリテーション科に22年勤務。舟波真一氏とともに「バイニーアプローチ」という独自の治療法を開発し、独立し現在に至る。施術だけでなく、講演会、講習会なども行う。著書は『痛みはうつぶせで治しなさい: 腰痛、ひざ痛、肩こりのない長持ちするからだをつくるには』(小学館)ほか
Northwest Superglass®
(ノースウェスト スーパーグラス)
主な特徴
不眠、かみしめ、歯ぎしりのない 上質な日常は足元を整えれば手に入る!
集中力を欠いたり、眠りを妨げたりするかみしめや歯ぎしり、日常生活の質を下げる不眠 ……。不快と思いつつ、いろいろ試してはみたけれどなかなか解決しないという方も多いのでは。さまざまな症状に悩み、『どこへ行っても足腰の痛みがなかなかよくならない、うまく歩けない、腕が上がらない、よく眠れない、歯ぎしりがひどい、スポーツのパフォーマンスの伸びがあと一歩足りない……。そんな人たちが駆け込む施術院がある。それが長野市にある『SONA高田』だ。噂が噂を呼び、体の悩みをかかえる人たちが助けを求めてここを訪れる。そんな人たちの悩みにじっと耳を傾け、穏やかに質問を重ねながら治療する山岸茂則氏。いったい彼はいかにして、多くの人に”すがられる”施術家になったのか。』に訪れる方のなかには、こうした悩みを抱えていたけど解消した方が多いのだそう。
山岸氏 「膝痛や腰痛などの施術で来られたのですが、拝見しているうちに、不眠やかみしめ、歯ぎしりなども同時に解消したという方が実は多くいます。これはまさに我々の施術法である❝バイニーアプローチ❞の特徴で、患部のみではなく、その根本原因となるものを見つけ出して施術を行うことで、全身が整うからなのです」
かみしめが強ければマウスピースを作ってもらう、不眠なら布団や枕にこだわるなど症状が出たところに直接アプローチするのもいい。しかしこれだとその道具を使い続けないといけないので根本的な解決に至らないのだとか。
山岸氏 「日常の質を下げる不眠やかみしめ、歯ぎしりなどの原因は、生活習慣やストレスなども考えられますが、案外違うところにも原因があることも多く、なかなか根本の原因 にたどり着くことができません。こうした症状の人で❝バイニーアプローチ❞によって改善した人の共通する特徴は、首の上のあたり、正式には脳幹といいますが、ここにねじれがあることと、足元が不安定ということです。脳幹は顔の筋肉を動かすための指令を出す神経が通っているのですが、ねじれによってその神経が圧迫されてまっているために、いい指令が出せないと歯ぎしりやかみしめ、人によっては顔面麻痺、頭痛、肩コリにもつながります。また足元の不安定さは全身の不安定さにもつながり、体のバランスを崩すことでも不眠やかみしめ、歯ぎしりという症状が出ることがあります」
半月板損傷で再生医療を受けたものの、膝の痛みからなかなか解放されず、ようやく山岸氏のところにたどり着いた飯ケ濱一恵さん。初診では、膝の施術を受けられると思いきや、山岸氏は全身をくまなく確認したあと、首、そして尾てい骨の施術を中心に行ったという。
山岸氏「膝痛がいちばん辛い症状だったと思うのですが、それ以外にも腰痛、肩コリもひどく、その痛みによるストレスもあってかみしめも強く、不眠に陥っていました。全身を拝見すると、首のあたりにねじれ、尾てい骨のゆがみ、足元にぐらつきがありました。これらによって足元の神経および首の神経がひっぱられてつぶされてしまったことが、飯ケ濱さんにとっては諸悪の根源だと考えました。そしてまずは首と尾てい骨まわりの骨や筋肉を覆っている膜組織をほぐしたのです」
飯ケ濱さん「初めて診ていただいた夜、さっそく体がポカポカしてきたんです。膝の痛みも軽減しつつありましたが、首まわりや尾てい骨まわりをほぐしたことで、首や肩のコリや腰痛がラクになりました。尾てい骨が曲がっていたのは、おそらく5年くらい前に転倒してお尻を地面に打ち付けてしまったことがあったから。私は何も言いませんでしたが、山岸先生から❝ひどく転びましたか?❞と聞かれてびっくりしました!また足元がぐらぐらしていて不安定なため、膝も不安定になり、その積み重ねで負担がかかり膝の痛みが出るのだと説明を受けました。さらには足元のぐらつきによって首から背中、足へと続く神経を圧迫していることも、くいしばりの原因になっていたようです。これらの説明を受けて、一つ一つの痛みの点が1本の線でつながっていることが分かりました。膝が痛いからといって必ずしも膝だけが原因ではなく、ほかにも原因があるからこそ、今までなかなか治らなかったんだと思います」
山岸氏「首や尾てい骨まわりは施術で整え、足元の改善として医療用足底挿板であるファンクショナルオーソティックスの『Northwest Superglass®』を初診の日に提案しました。というのも、『Northwest Superglass®』を初期段階で使うことで、今後の施術の効果を最大限に引き上げられると判断したからです」
飯ケ濱さん「先生の予想は的中。初診から1カ月後には『Northwest Superglass®』が手元に届き、使うようになると、職場で立ったり座ったりするときに口癖になっていた❝いててて❞と言わなくなったんです。職場のみんなも驚くほどでした。また仕事中、集中するとどうしてもかみしめが強くなってしまって、ひどいときは肩コリや麻痺とまではいかなくても顔の右半分が痛くなることがありましたが、そうしたことも徐々に減りました」
医療用足底挿板のファンクショナルオーソティックスである『Northwest Superglass®』は、❝機能的❞と訳されるファンクショナルという通り、本来ある足に備わった機能を取り戻すための医療用足底挿板。歩く、走る、立つといった動作に伴った衝撃を吸収するために足は内側に倒れるが、実際には倒れすぎてしまう人が多い。そういった場合、適正な位置まで倒れてアーチがクッションの役割をしたら、次の一歩を踏み出すために足は外側に傾くという機能を持っている。動作によって内側や外側に倒れるのを繰り返す❝揺らぎ❞をスムーズにしてくれるのが『Northwest Superglass®』だ。こうした足の動きはアメリカの足病医学に基づいている。
山岸氏「一人ひとりの足を採型して、そのデータをアメリカに送って職人たちによって手作りするのです。採型するときは、無荷重の状態で、足の本来の働きを最大限に発揮できる位置にセットして行います。採型は5分程度で終了します。以前は石膏を用いた採型を行っていて、患者さまにも採型を行う側にも負担が大きかったようです。でも、今は、iPadに搭載されたストラクチャーセンサーで足型を採型するというNWPL社の『SmartCast®システム』を使い、その場でアメリカにデータを送信できるというメリットもあり、大変便利です。他方、データに基づいて作成するというと、印象としてはすぐできると思われるかもしれあませんが、実は、熟練の職人がひとつひとつ手作業で仕上げています。そして3週間ほどで、この世の中に一つだけのファンクショナルオーソティクスをお客様のお手元にお届けすることができます」
飯ケ濱さん「初診から『Northwest Superglass®』ができるまで、私は1カ月程度でした。さっそく手元に届いて、外用の靴と室内用の靴にも入れると、しっくり靴に足が収まって安定する感じがなんとも言えませんでした。そして足がぽかぽか、元気が出てきて嬉しくて思わず山岸先生にメールをしちゃいました。もちろん膝痛も日に日によくなり、軽やかにすたすた歩けるようになりました」
飯ケ濱さん「膝痛がひどくて足をかばって歩いていたら次は腰にきて。痛くて眠れないから不眠が続くし、かみしめもひどかったんです。しかも自分が想像している以上に強い力でかみしめているので、舌の下の骨が隆起してくるし、歯は割れるし、右の顔面が痛くなるし……。一つ痛いところがあると、連鎖のように次々と痛みが出てきてとてもストレスの多い日常でした。もちろん歯科医にも診てもらいましたが”これは仕方ないですね”という診断に❝ああ、そうなんだ……❞という諦めに近い感情で受け入れました。ところが施術を受け、『Northwest Superglass®』を使い始めると、一つ一つよくなっていくのが手に取るようにわかるんです。最近嬉しかったのは、1年に3つくらい買い替えていたマウスピースをせずに寝られるようになったこと。以前はよく夫に❝苦虫みたいな顔をして寝ているよ❞なんて言われていましたが、それもなくなったようです。今は3秒で寝られて朝までぐっすり。昼間の仕事に集中できるし、痛みがなく全身から元気が湧いてくるので、同僚から❝若返った❞と言われるようになり、なんだか毎日うきうきしています」
山岸氏「痛みは不安とセットで感情づけされ、❝痛みが出たらいやだな❞という不安がさらなる痛みを生みます。でもこうした負のスパイラルを飯ケ濱さんは立ち切れたようですね」
山岸茂則さん
専門理学療法士(運動器系)。『SONA高田』院長。専門学校卒業後、飯山赤十字病院リハビリテーション科に22年勤務。舟波真一氏とともに「バイニーアプローチ」という独自の治療法を開発し、独立し現在に至る。施術だけでなく、講演会、講習会なども行う。著書は『痛みはうつぶせで治しなさい: 腰痛、ひざ痛、肩こりのない長持ちするからだをつくるには』(小学館)ほか
Northwest Superglass®
(ノースウェスト スーパーグラス)
主な特徴
膝痛・捻挫を乗り越え
41歳プロマウンテンアスリート・山本健一、
ただいま人生絶好調
Contents
ウインターシーズンはクロスカントリースキー、グリーンシーズンは山を走るトレイルラニングと、山をフィールドに活動するプロマウンテンアスリートのヤマケンさんこと山本健一さん。激しい競技故に、ケガとはいつも隣り合わせだ。「何度ケガをしてもやっぱりマウンテンスポーツは面白い、だからやめられない」と言う彼のフィジカル面をサポートするのは山岸茂則氏。2人はどのように出会ったのだろうか。
ヤマケンさん「出会ったのは2013年、古傷である膝がどうしようもなく痛くなったときですね。僕のケガの歴史は20歳のときにさかのぼり、大学時代、スキー部でモーグルをしていて着地を失敗し、前十字靭帯と半月板を損傷。それ以来、ケガとともにある競技人生なんです。このケガ以降に半月板は切除。その後はしばらく調子がよかったのですが、トレーニングなどで酷使が続いてとうとう悲鳴を上げたのです。日常生活でも膝の神経が圧迫される違和感から始まり、とてもじゃない、走れないというところまで痛みが強くなっていました」
山岸氏「かれこれ8年になるんですね……。共通の知人の紹介で施術を受けに来たのです。それ以来、チームヤマケンの一員として、彼の体をずっと見ています」
ヤマケンさん「日常的なケアは地元の酸素ルームやトレーナーさんのところに行き、大きなけがやどうにもならない痛みのときは山岸先生に相談。山岸先生は、体の仕組みのこと、本当に詳しんです。だからケガのことや体の使い方などを細かく見ては評価してくれます。それに加えていつも❝大丈夫、大丈夫❞と言ってくれるのでケガへの不安や回復への焦りなどを和らげてくれ、精神面でもサポートいただいています。とても頼もしい存在です」
知人の紹介で、はじめて山岸氏の施術「バイニーアプローチ」を受けることになった。それまでは地元で定期的にカイロプラクティックを受けたり、ケガをすれば整形外科に通ったりと施術院や治療院でさまざまな施術を受けてきた。その方法とは全く違い、「バイニーアプローチ」は驚くほどソフトタッチで施術をする。体をゆらゆらゆらしたり、骨の具合を触診したりしながら行う山岸氏の施術を、どのように理解しているのだろうか。
ヤマケンさん「ベッドに寝て、ケガをしている箇所だけではなく、全身に触れて首のまわりだけをずっと手で揺らしたり動かしたりしている時もありました。不思議と心地よくて、ここに来るとすぐ寝てしまうんです。でもあるとき、❝何をしているんですか?❞と聞いたら、❝骨の位置を元の位置に戻す作業をしているんです❞と説明されました」
山岸氏「痛みが出る場所やその原因となっている場所の特徴というのは、筋肉や骨、靭帯などを包む膜組織というものがあって、それが硬くなっています。硬くなることで、痛みが出たり、動きを妨げたりするのですが、それには2つの原因が考えられます。ひとつは硬くなった膜組織に神経が巻き込まれてしまい、その神経が引っ張られて痛みを引き起こす、また動きの指令を届きにくくさせてしまう。もうひとつは、体の使い方のクセなどによって、違和感や痛みが出た箇所の周りの膜組織が硬くなり、本来あるべき位置ではない場所に骨があり、関節の動きなどを妨げてしまっていて違和感が出ることがあります」
ヤマケンさん「初めて山岸先生の施術を受けたときは、膝を診てもらおうと思って行ったけれど、首や背中などの施術に時間をかけていましたね。でも終わってみると不思議と痛みが和らいでいるのを感じました。また別の時に、クロスカントリースキーで疲労がたまった足首が急に動きづらくなり、動かすと詰まった感じがあったんです。そのときはとにかく足首をいろんな方向に動かしてずっと触っていたのですが、施術が終わると足首が今まで通り自由に動く、いい位置の骨や関節があるのを感じました。これが先生の言う骨の位置を戻す施術なんだと実感した瞬間でした」
右膝に大きな爆弾を抱えているとはいえ、ケガは膝だけではない。2020年の秋、母校である信州大学でボルタリングのトレーニングをしていたときに悲劇が起こった。のぼりきってマットに飛び降りたその時、マットのつなぎ目に足首が挟まり、前距腓靭帯断裂。すぐにレントゲンとMRIを撮り、松葉杖生活が始まったのだ。
山岸氏「ケガから1か月くらいでようやく松葉杖なしで歩けるようになった頃から復帰へのプログラムを本格的に考えました。ケガをした左の足首を見たとき、相当不安定な状態でした。そこで施術と並行して、ノースウェスト・ポディアトリック・ラボラトリー社(NWPL社)のファンクショナル・オーソティクス(足の動きを最適化する医療用足底挿板)である『Northwest Superglass®』を使うことを提案しました。ケガをしていないヤマケンの足なら足元の動きは適正の範囲内におさまっており、その結果、歩いたり走ったりすると足が内側に倒れたり、外側に倒れたりという適切な動きをします。しかし、ケガの影響で足首が不安定だったので、正常に足を使う感覚を取り戻すために提案したのです」
ヤマケンさん「最初の印象は硬い!こんな硬いインソールを使ったことがなかったので驚きました。でも硬いとは、いい意味で、です。地面からの反力を直接受けることができる。沼を歩くより、舗装された道路を歩くほうがラクですよね。まさにこの感覚。普段履くシューズに入れて平地を歩くところからはじめ、次は不整地を、その次はジョグを、最後はトレイルへと段階を追って5カ月かけてようやく山に戻れました」
山岸氏「『Northwest Superglass®』を使ってから驚くほどの回復力でしたね。これを使って歩いたり、ジョグをしたりといった刺激によって靭帯が徐々に締まっていくのが施術をしていてもわかりました」
ヤマケンさん「『Northwest Superglass®』は、ほかのインソールが普通自動車だとすると、F1カーみたいなもの。普通自動車は免許さえあれば誰でも乗れるけれど、F1カーのような精密機械は乗りこなせない。『Northwest Superglass®』に足をのせて本来足に備わっている適正な動きで歩いたり、走ったりしなければ、性能を発揮してくれません。僕は山でのトレーニングを開始してしばらくしてからは、『Northwest Superglass®』は普段のシューズだけにし、トレーニングではもう少しシューズの中で自由が利くインソールにと使い分けました」
山岸氏「足首の安定性が取り戻せたことと、彼が元来持っている足の特徴と、ある程度足がシューズの中で動くことで体のバランスをとるトレイルランニングという競技の特性から、トレランのときは必要ないと判断し、使い分けを勧めました」
ヤマケンさん「日常生活で『Northwest Superglass®』を使うことで、足の骨の位置がいいポジションにあり、その矯正によって足首が安定するというある種、成功体験みたいなものを感じていました。だから、トレーニングのフィールドを山に戻しても安心して走れました。しかも『Northwest Superglass®』は医療用なので、どういう仕組みで痛みが軽減していくとか動きに影響を与えるのかといった知識を持って使うことで、回復を実感できる、走ったときに自信が持てる。治療や施術、こうしたアイテムはどういうもので、なぜ自分のケガに有効なのかを知っておくことは、とても意味があることだと思います」
2年前、高校の教諭からプロに転向。体育を教えながら山岳部とスキー部の顧問をしていてそれももちろん楽しかったというヤマケンさん。だから部活にものめり込んで。そうなると自分のトレーニングや家族との時間がない。でも今は存分にトレーニングもできて本当に幸せだという。
山岸氏「私から見てこの数年は、私が関わり始めた頃より調子がいいように思います。去年、自分プロデュースで甲斐の国トレイルを4日間、336㎞を走っているのを見たときは、本当に人生絶好調だな思いました」
ヤマケンさん「最近は僕の弱点でもある右膝をとにかく鍛えています。それは『Northwest Superglass®』を使ったことによって、右足の安定性も出てきて不安が減ったことが大きいと思います。今までは、負担をかけないように、と反対の左足を強化してきましたが、安心して右足にも刺激を入れるトレーニングができています。そういったトレーニングもそうですし、やはり支えてくれる仲間に恵まれています。
こうして僕の体をメンテナンスしてくれる山岸先生は実はメンタル面でもすごく支えてくれています。大きなけがをしても必ず❝大丈夫❞と言ってくれ、自分がすること、決めたことをすべて認めてくれる。体の状態に対して、今を起点にしてよくなることしか言わないのもすごく自分にとっては心の支えになっている。
どうしても経験や年齢を重ねると、前はこれくらいできたのに、これくらいは回復したのに…と思ってしまい、焦りが出てくる。でも現時点から見てどうするのがいいかしか言わない山岸先生の言葉は、今より1歩でも前にという気持ちにさせてくれるので、競技もすごく楽しく向き合える。ケガがきっかけで出会いましたが、僕は大きなけがをするたびに、自分の人生を変えてくれる人に出会っている気がします。山岸先生もその一人。だから今は気持ちも体もとても充実しています。大きなけがで長期間離脱もなく、トレーニングも思ったように積めています。そのおかげで去年の10年来の夢だった甲斐国ロングトレイル(詳細は”山本健一「自分をさらけ出す旅〜甲斐国ロングトレイル PASaPASA」”をご覧ください。)を走りきれました。今年も自分プロデュースで、レースではなく旅や冒険といった気持ちでロングトレイルを自由気ままに、好きな仲間と走れるといいですね」
撮影/金井真一 取材・文/峯澤美絵 協力/WebMagazine GRANNOTE
山岸茂則さん
専門理学療法士(運動器系)。『SONA高田』院長。専門学校卒業後、飯山赤十字病院リハビリテーション科に22年勤務。舟波真一氏とともに「バイニーアプローチ」という独自の治療法を開発し、独立し現在に至る。施術だけでなく、講演会、講習会なども行う。著書は『痛みはうつぶせで治しなさい: 腰痛、ひざ痛、肩こりのない長持ちするからだをつくるには』(小学館)ほか
Northwest Superglass®
(ノースウェスト スーパーグラス)
主な特徴
立ったり座ったりするのも痛い、立ちっぱなしも歩くのも痛い、日常生活のありとあらゆる動作に支障をきたす膝痛。しかも質(たち)の悪いことに、一度よくなっても、ふとした拍子に痛みが再発するのが膝の痛みだ。
山岸氏「膝痛で長年つらい思いをされている方が本当に多くいます。半月板損傷、膝に水がたまる、変形するなど症状はさまざまですが、日常生活に大きな支障をもたらしてしまいます。膝痛は完治が難しいという性質があるため、一度経験した人は、整形外科、接骨院などの迷い子になる人が少なくない。とにかく治療に時間と労力とお金を多く費やしている方が多いような気がしますし、実際、そのような患者様が多くご来院します」
膝痛の方はどうしても膝だけにその原因と治療を求めがち。しかし実際には膝だけが問題ではないことも多いのだそう。
山を駆け上がるスカイランニングという競技で、木の根っこに躓いて転んだ際に右膝を痛め、その後も思うように回復しなかった井上 海埜哩さんも、膝痛に悩める一人だ。去年の夏頃に膝を痛め、1か月経っても正座をすると痛みが出るので、これはおかしいと思って整形外科を受診し、診断結果は、変形性関節症と内側半月板損傷。関節の近くから関節の中に針を刺して関節液を抜く関節穿刺(せんし)をし、ヒアルロン酸を3回打ったけれど、なかなか思うように回復しなかったそう。そこで知人の紹介でたどり着いたのが『どこへ行っても足腰の痛みがなかなかよくならない、うまく歩けない、腕が上がらない、よく眠れない、歯ぎしりがひどい、スポーツのパフォーマンスの伸びがあと一歩足りない……。』そんな人たちが駆け込む施術院がある。それが長野市にある『SONA高田』だ。噂が噂を呼び、体の悩みをかかえる人たちが助けを求めてここを訪れる。そんな人たちの悩みにじっと耳を傾け、穏やかに質問を重ねながら治療する山岸茂則氏。いったい彼はいかにして、多くの人に”すがられる”施術家になったのか。
山岸氏「さっそく見てみると右膝の内側靭帯が緩んでいました。ここへのアプローチがなかったので、回復しづらかったのだと思いました。また過去のケガのことを聞いてみると、気になったのが右足のケガが多いこと。子どもの頃からの捻挫ぐせ、踵骨疲労骨折、シンスプリント。どれも右足ばかりで、右の足元が不安定で、不意な外力などに反応しづらいのです。膝の靭帯損傷に加えて土台である足元が不安定であるがために、それも膝にも影響を及ぼして痛みを作り、なかなか治らないといった悪い循環が起きていました。こういうときにもバイニーアプローチは有効なんです」
バイニ―アプローチ……もう一度復習しよう。体をゆらゆらと揺らし、同じリズムの刺激を入れることで、靭帯を締め、筋肉などを覆う膜組織の過度な緊張を取り除いて筋肉がよく働くようになるという施術法。井上さんの場合はこうしたリズム運動によって足元と右膝の靭帯を締めることができ、痛みの軽減につながったのだ。
スカイラニングだけでなく、山岳スキーのSKIMO(スキモ)など、ハードなスポーツをこよなく愛する井上海埜哩さん。ハードがゆえに、ケガも尽きない。
山岸氏「初めて拝見したときに、膝の靭帯が緩んでいることも、右の足元が不安定だということもすぐに分かりました。そこで、足元の不安定性の解消および膝の靭帯を締めるために医療用の足底挿板である『Northwest Superglass®』の提案をしたのです」
井上さん「膝は手術しないといけないかも……と思っていたので、それが解決するのならいいと思い、すぐに作ってもらいました。また、機能的なインソールというだけでなく、❝医療用❞の足底挿板だということと、足の動きを最適化することができるという説明を山岸先生から受けたのも『Northwest Superglass®』を使う決め手となりました。これからまだまだスポーツを続けたいので、少し高額だな……も感じましたが、ケアとしての投資だと思ったのです」
山岸氏「膝の痛みを生むもう一つの原因として、足元の不安定さも実は気になっていました。足元が不安定のため足の左右差が生じてしまい、片方の足が沈み込むことで脛が内側にねじれ、膝が内側に入ってしまうことも結果的には膝痛を助長していました。さらに足元の不安定さは、痛みをうむ以外にも全身にも大きな影響を与えているのではないかと考えました。具体的には、呼吸が浅く、疲労度が強いのでは、ということです。事実、足元の不安定さが体幹にも影響し、腹圧の低下等も影響して、アンバランスになり心臓が下がり、肺が上がっていたのです。これでは酸素をうまく肺に取り込めず、エネルギーを作り出せないという状態になっていました」
井上さん「スカイランニングやSKIMOで追い込んだりすると、ぜーぜーしてしまってせきができることがよくありました。ところが膝の痛みがなくなったあたりから、せきや息苦しさが減って呼吸がラクになったのです。以前に、走ると息が上がって苦しかったペースも、段々走れるようになりました。そう気づいたのは『Northwest Superglass®』を使い始めて3か月くらいたってからだったと思います」
山岸氏「これは施術と『Northwest Superglass®』によって、足元の不安定さの解消および膝の靭帯が締まったことで膝のぐらつきがなくなって体幹も安定し、心臓と肺の動きがよくなったサインでしょう。呼吸がラクにできるようになり、しっかり酸素を取り込めるようになったからです」
井上さん「まさか膝がよくなるのと、呼吸が深くなりせきが出にくくなるのが同じことが原因だなんて、信じられませんでした! 子どもの頃からスポーツをしてきたので、右足のケガが多いなというところまでは自覚はありました。これがまさか上半身まで影響を及ぼしていたとは! 呼吸が浅いことや、せきが出るのは、痛みを伴わないし、スポーツをすれば当たり前のことだと思っていました。しかし実際にこういった症状が改善すると、とても快適。痛みや不調の部位は離れていても、体はちゃんとつながっているんだな……と実感しました」
井上さん「『Northwest Superglass®』を使い始めて1か月は、シューズに入れて5㎞程度のウォーキングと、1日5~6時間の立ち仕事と、できるだけ長時間使うようにしました。人によっては徐々に使用時間を伸ばすようですが、私は使ってすぐに歩くと体が運ばれるようにスムーズに歩けてフィット感が高く、違和感もなかったので最初から長時間使うことができました。すると、1か月もしないうちに膝の痛みが軽減、3か月くらいで呼吸がラクになり、走って追い込んでもぜーぜーすることが減りました。今は80㎞走っても膝が痛むことはないし、痛くなったらいやだな、という恐怖心もありません。月に一度程度の施術によるメンテナンスと『Northwest Superglass®』で体の調子が上がっていくのが手に取るようにわかります。スカイランニングもSKIMOもっと追い込める!と思えるようになり、これからのレースが待ち遠しいです」
山岸氏「もともと右膝の靭帯が緩んでいたのに加えて、左右の足がアンバランスだったので、右足の靭帯を締めて足元のバランスを整えることが最優先でした。そこでスカイランニングもSKIMOもトレーニングを欠かさない井上さんには、宿題を出してもこなすだろう、と思い3つ出しました。ひとつは座って骨盤のあたりから体をゆらゆら、2つ目はうつ伏せになって膝を曲げてトントン、3つ目は不整地をできるだけ歩く。こうした一定のリズムによる刺激は、何百回と体に入れることで、膜組織を緩めて体のバランスを整える、緩んだ靭帯が締まるという実験結果が出ています。これを着実に行ったことも、井上さんの膝痛の回復に大きな手助けをしたことはいうまでもありません」
山岸茂則さん
専門理学療法士(運動器系)。『SONA高田』院長。専門学校卒業後、飯山赤十字病院リハビリテーション科に22年勤務。舟波真一氏とともに「バイニーアプローチ」という独自の治療法を開発し、独立し現在に至る。施術だけでなく、講演会、講習会なども行う。著書は『痛みはうつぶせで治しなさい: 腰痛、ひざ痛、肩こりのない長持ちするからだをつくるには』(小学館)ほか
Northwest Superglass®
(ノースウェスト スーパーグラス)
主な特徴
腕が上がらない、腰痛、脚の強い疲労感……満身創痍の状態から抜け出せたら気持ちも体のラインにも嬉しい変化が!
7年前にぎっくり腰になり、それ以来コルセットが手放せず、腰痛に悩まされ、5年前には膝のこわばりを感じて階段をスムーズに降りられなくなった。3年前から左の股関節や臀部に違和感が出て、それ以降、脚がとても疲れやすく、痛みを感じることもある。全身のあちこちに痛みや不具合を感じている川島康子さんの目下の悩みは、肩の痛みで左腕が思うように上がらないこと、なかなか完治しない腰痛、脚の疲労感が強くなってきたことだと言う。
川島さん「腕が上がらなくなったのは、1年前に転倒して肋骨を骨折してからのこと。特に、最近は肩の痛みで腕が上がらないこと、頑固な腰痛、脚の疲労感に耐えられず悩んでいたところ、職場の同僚が山岸先生を紹介してくれてここに来ました」
山岸氏「初めて来られたとき、猫背が強めだなという印象を受けました。また、左足が躓きやすい、疲れやすい、左肩が上がらないなど体の左側ばかりに不調が出ているのも気になりました」
川島さん「施術は肩や腰、脚などの痛みや不具合があるところを直接、ほぐしたり動かしたりするのだと思っていたら、全身をゆらゆらするなど穏やかなものでした。終わってみると、腰痛や脚の疲労感が軽減したのを感じたとともに、左腕がすんなり上がるようになっていたのには驚きました」
山岸氏「体をゆらゆらするのは、骨や筋肉を覆っている膜組織を緩めただけですよ。そうすることで筋肉の動きがよくなりますから」
川島さん「膜組織が緩んだことで骨や神経の配置がよくなって動きがスムーズになったのだと思いました。たった1回の施術で7年もの間悩んでいた腰痛が軽減し、何をしても上がらなかった左腕が上がるようになって嬉しくてたまりませんでした」
山岸氏「肩や腰や痛みが軽減したことはもちろんのこと、川島さんは見た目もとても変化がありましたね。腰痛でどうしても体を丸めがちで猫背気味だったのが、体が上に伸びてお腹周りがすっきりして脚がすらりとしたのがとても印象的でした」
川島さん「そうなんです、実は施術後からお腹はすっきりして履けなかったパンツが履けるようになったんです。しかも脚がむくみにくくなりましたし」
山岸氏「脚のむくみが気になる、O脚を治したい、下腹を凹ませたいということが目的で当院にご相談にいらっしゃる方はそれほど多くないのが実情です。しかしながら、体の痛みや不具合を解消するための施術を実施した結果、これらの症状も解消したという方が、実は結構多くいるんです。例えば腰痛がよくなったら便秘が改善して下腹がすっきりした、という人もいます」
腕が上がらない、腰が痛いといった症状だけでなく、実は外反母趾で足にしびれを感じていた川島さん。施術をするなかで、患部だけが痛みの原因になっているのではなく、体の不具合を改善するためには、実は足裏を整えることがとても重要であることに気づかれたのだそう。
川島さん「肩や腰の痛み、脚の疲労感が日常的に気になっていたので、足の指にしびれがあることはあまり気にしていませんでした」
山岸氏「川島さんの体を見ていて特徴的だったのが、足裏のアーチの崩れです。特に左のアーチがつぶれてしまっていて、その影響で体が左側に傾きがちでバランスを崩してしまっていました。このことが、肩が上がらない、腰痛、脚の疲労感やむくみ、猫背になりやすい、といった複数の症状の元凶ではないかと思ったのです。アーチがつぶれてしまっていることで、動脈も静脈もリンパ、そして神経も足裏で圧迫されている状態になっていたのです。静脈とリンパが圧迫されていると、心臓から全身に行き渡った血液とリンパ液が心臓へと戻りづらくむくみやすく、疲れやすくなります。神経の圧迫で左肩が思うように動かない、お腹に力が入らず姿勢が崩れてしまうという原因になるのです。そこで3回目の施術の時に、アーチが崩れないように、足の機能を適正化できる足底挿板、『Northwest Superglass®』をご提案しました」
川島さん「足元は思った以上に全身に影響を及ぼしているんだな、と改めて実感しました。2回の施術で確かに肩や腰の痛み、脚の疲労感は軽減しましたが、施術は毎日受けることはできません。でも日々の生活のなかで足元が整っていれば、こうした痛みの根本的な原因の解決になるのではと思い『Northwest Superglass®』を作りました」
『Northwest Superglass®』を使い始めると、もうひとつ嬉しい変化があったという川島さん。それは長年、腰痛のために前かがみで猫背になっていた体が、施術のときと同様に上に伸びるような感覚を味わえたこと。
山岸氏「『Northwest Superglass®』を靴に入れて日々歩いたり、動いたりすることで足裏からいい刺激が入ることになります。『Northwest Superglass®』はつぶれてしまったアーチを持ち上げるのではなく、もう少し踵側のくるぶしの下あたりで、重心がかかる場所を支えるしくみになっています。その位置を刺激することが筋活動を活発にして腹圧を高めることにつながるということが私たちの臨床での検証から明らかになっています。また『Northwest Superglass®』はヒールカップが深いことも特徴で、靴の中でも足の揺れを防ぎ、体を安定させます」
川島氏「仕事のときの靴に『Northwest Superglass®』を入れているのですが、地面を掴み体が安定する感覚がよくわかります。靴を脱いだとたんに、体が不安定になるので、そのときに『Northwest Superglass®』がサポートしてくれているんだな、と強く実感します。また、体が上に伸びる、お腹に力が入る感覚は初めてで、とても不思議で新鮮でした。そのおかげで猫背によって下腹が前に出てしまっていたのがすっきりしたのです。姿勢が悪くて内臓が圧迫されていたんでしょうね。便秘も解消して実は少し痩せました! また少しながら、O脚が改善されたことも嬉しかったです」
山岸氏「『Northwest Superglass®』を使ったことで、左足のアーチの崩れが改善して、神経や血管の圧迫がなくなったことで痛みの軽減だけでなく、体のバランスがよくなったのがわかりました。もともと細身の川島さんですが、姿勢がよくなったことでよりスマートに若々しく見えました」
普段は理学療法士として働く川島さん。お年寄りの方が動くのをサポートするので、どうしても体に負担がかかる姿勢が多いそう。加えて兼業農家を営んでいるため、週末は畑仕事をする。重い資材を運ぶなど力仕事が多い。
川島さん「体のあちこちに痛みが出てきて、思うように動けないから気持ちもネガティブになりがち。まさに満身創痍でした。年齢的に仕方がないのかなと思う一方で、この体で大丈夫なのかな、と不安に思っていました。腰が痛くて仰向けで寝られないし、左の肩が痛いから左側への寝返りが打てない。だから睡眠が浅い。痛みのひとつひとつが生活の妨げになっていたのです。ところが『Northwest Superglass®』を使い始めてすぐに変化を感じました」
山岸氏「川島さんの場合、施術だけでも十分変化があったのですが、施術直後だけでなく、痛くない状態が日常であってほしいと思っています。こうした施術の持ち越し効果を伸ばすために『Northwest Superglass®』は彼女にとってとても有効だったと思います。いろんな不具合の根本的な原因となっていた足裏のアーチの崩れを是正できたのですから」
川島さん「7年間、手放せなかったコルセットを手放せ、よく眠れるようになり毎朝がとても快適です。起きたときに、どこも痛くないと”今日も頑張ろう”という気持ちになる。職場でも畑仕事でも機敏に動け、軽快に歩けることがこんなに快適なんだと、感じることができて本当に幸せです。家族や同僚もその変化が手に取るようにわかるようです」
山岸氏「月に1回程度の施術と、1日の大半を過ごす職場で『Northwest Superglass®』を使うことと併せて、もうひとつ、セルフケアとしてうつ伏せで腰のあたりをゆらゆらすることを勧めました。朝と夜、数分でも行うことで、膜組織を緩めて筋肉の動きをよくします。すると体がスムーズに動くようになり、痛みを軽減することにもつながります」
撮影/金井真一、取材・文/峯澤美絵
山岸茂則さん
専門理学療法士(運動器系)。『SONA高田』院長。専門学校卒業後、飯山赤十字病院リハビリテーション科に22年勤務。舟波真一氏とともに「バイニーアプローチ」という独自の治療法を開発し、独立し現在に至る。施術だけでなく、講演会、講習会なども行う。著書は『痛みはうつぶせで治しなさい: 腰痛、ひざ痛、肩こりのない長持ちするからだをつくるには』(小学館)ほか
Northwest Superglass®
(ノースウェスト スーパーグラス)
主な特徴
人生の中で痛みがないなんて日が
訪れるとは思わなかった!!
腰痛は日々感じる痛みの中で最も多いと言われている。厚生労働省が行った国民生活基礎調査(平成25年)でも、普段自覚している症状で腰痛は男性が1位、女性が2位となった。ちなみに現在通院している病気やケガに関して腰痛は、糖尿病、高血圧、歯の病気に次いで男性は4位、女性は高血圧に次いで2位という結果だ。しかもとある企業による調査だと、腰痛によって仕事など作業効率が4割以上も下がるというデータもあり、腰痛は間違いなくQOL(Quality of Life, 生活の質)を下げてしまう原因になる。
山岸先生「私のところに来られる方は腰痛で悩んでいる方がいちばん多いと思います。職業病であったり、ぎっくり腰であったり、ふだんの使い方のクセであったり原因はさまざまですが、多くの方が定期的にマッサージに通っているという印象を受けます。ところがマッサージをしてもらったときはいいのですが、その効果が長持ちしないのが悩みのタネのようですね」
渡辺さん「私も10年前から腰と背中の痛みに常に悩んでいました。背中や腰が痛いと、孫を抱っこすることもできない、立っていても座っていても痛いので外出がいやになる、寝がえりを打つと痛みで目が覚めてしまう。こうして24時間、痛みが付きまとうのです。1週間に一度の割合で、職場の近くのマッサージ店にも通っていたほど。確かに施術をしてもらったときはいいのですが、数日するとまた痛みと隣り合わせの生活に戻ってしまう。それでも次にマッサージ店に行くまでは、なんとかやり過ごしていたという感じです」
山岸先生「渡辺さんは教員というお仕事柄、立ち仕事はもちろんのこと、授業のための資料づくりのためにデスクワークも長い。またそれ以前に訪問看護の仕事をしていて無理な姿勢をしていたことも腰痛の原因になっているのがすぐにわかりました。がしかし……渡辺さんの場合、これだけではありません。ケガが多いことも体には大きな負担になっているように思いました」
渡辺さん「そうなんです……、2年前に転倒して脛を骨折。このときはあまりの痛みにとにかく動かない生活を続けていました。しかし、これではいけないと思い、自分なりにリハビリを始めたのですがこれもよくなかったんでしょうね。平行棒につかまって歩くリハビリをしていたのですが、腰椎と頸椎を圧迫骨折してしまったのです。もっとさかのぼると子供の頃も自転車で転んで右肘を骨折したことがありました」
10年もの間、腰痛と背中の痛みに悩んでいてそれなりに手を施したものの、決定的な解決策が見つからない。しかもここ最近、その痛みは強くなる一方で、「これから自分の体は大丈夫なのか」と不安を覚えるようになったという渡辺さんは知人の紹介で山岸氏のところへ駆け込んだ。
山岸先生「渡辺さんの体を見てみると、背骨にズレがあることがわかりました。背骨は、頚椎7個(首)、胸椎12個(胸)、腰椎5個(腰)と24個の小さな骨が積み重なっていて、それぞれの骨が滑りよく動くことでねじったり、前や後ろ、横へと曲げられたりします。しかし渡辺さんの背骨は、積み重なりがズレていてそこに神経が挟まってしまっていることが腰痛の原因だとわかり、まずは施術をして背骨のズレを取り除くことに注力しました」
渡辺さん「ベッドに寝ていて入念に首や背中を触っては揺らす、ということをひたすら繰り返していました。もともとは知人から紹介で、”山岸先生に診てもらった多くの人の症状がよくなっているよ”と聞いていたので、藁にもすがる思いで先生に施術をしてもらいました。施術が終わって数日後、明らかに体がラクになる感覚がありました」
山岸先生「ゆらゆら体を揺らしながら、筋肉や骨を覆う筋膜を緩めたのですが、こうすることで、ねじれたりずれたりしてしまった筋膜や関節などが本来の位置に戻ろうとして痛みが出ることがあります。渡辺さんの場合、施術後にすぐにその反応が出て、それが治まると体が整い始めて今まで感じていた背中や腰の痛みが軽減したのだと思います」
渡辺さん「もうびっくりしました。私の人生で痛みがないときが来るなんて思っていませんでしたから……。ただし頑固な腰痛だけは1回の施術では違和感がある日もあり、立ち仕事が長い日は痛みを感じることがありました」
2回ほど施術をしてずいぶん痛みは緩和したものの、完全にはまだ痛みを排除しきれていなかった。なぜなら腰痛や背中の痛みを慢性化させる原因が背骨のズレともう一つ、足元が不安定さであったからだ。
山岸先生「施術で背骨のズレを取ることはできます。ところが足首の不安定さは別もので、そもそもの足の骨の配列が崩れているので施術ではどうにもできません。しかも足裏は常に地面から影響を受けるため、それが全身にも大きく影響します。渡辺さんの場合、特に右足が不安定だったため、これを安定させて足の機能を適正化するために『Northwest Superglass®』を提案しました。施術に来られない日々においても『Northwest Superglass®』をご利用いただき足元から整えることで、施術の効果を持ち越す、という狙いもありました」
渡辺さん「初めて見て触った感想は硬いなということ。そして高価なものだなということ。しかし実際に使ってみると硬さはまったく感じませんでした。むしろ立つと安定感があるので、立ち仕事がラクになった感覚がありました。また、常に痛みとの隣り合わせだったので、これでなんとかなるならと思い、購入を決意。高額ではありましたが、結果として大正解の買い物でした。そして使って一番大きな変化は、背中の痛みや腰痛の軽減だけでなく足のサイズが変わったことです」
山岸先生「正確にいうと、足のサイズが変わったのではなく、本来のサイズに戻ったのです。足元が不安定だと、クッションの役割をするアーチがつぶれてしまって足長が伸び、開帳足といって足が広がって大きくなってしまいます。それによって指が靴にあたるようになり、大きな靴を選ぶ方が多くいます。渡辺さんもそうでした。しかし足元を整えて、アーチの機能を取り戻せると足が元のサイズに戻ろうとするため、足が小さくなったような感覚になります」
渡辺さん「もともと靴のサイズは26.0㎝だったのが今は24.0㎝。これは背中や腰の日常的な違和感が消え始めたころからの変化です。しかも腰痛が軽減したことで便秘もよくなったのも嬉しい変化です」
山岸先生「実は便秘もちの人は腰痛の人が多いんです。腰から出ている神経が、便秘で硬くなったお腹に引っ張られてしまい腰の痛みを引き起こすことがあります。ですので、便秘が解消すると腰痛が軽減、また逆のことも起こります。便秘を治すことを目的に当院にお越しになられる方はいらっしゃらないのですが、施術の結果、便秘などの諸症状が改善したと喜んでくださる方は多くいらっしゃいます」
渡辺さん「2歳と10歳になる孫がいるのですが、一緒に公園に遊びに行っても、腰痛がつらいので、つい”車の中で待っているね”というのが私にとっては当たり前になっていました。育ち盛りで走り回るのが大好きな孫たちとの遊び相手になれないことが寂しくも思えました。でも腰痛から解放された今、公園の小さな丘だった一緒に歩けるし、抱っこもしてあげられる、こういうことをできるようになったことが本当に幸せです。
また、うつ伏せで読書をするのも私のかつての楽しみでした。ところが腰が痛いと、とてもじゃない、うつ伏せになれなくて。この楽しみもできなくなったことを、何年もの間、残念に思っていました。しかし、山岸先生の施術を受けて、『Northwest Superglass®』を使うようになったことで、腰の状態は驚くほどよくなって、うつ伏せでの読書ができるようになったのです。こういう日常の小さな楽しみを体の痛みは奪ってしまいます。でもそれを今はひとつずつ取り戻して、日々を楽しんでいます」
山岸氏「10年もの間、腰痛で悩んでこられていたので、一朝一夕に完治するということにはなりません。とくに腰は日常的に負担が多い部位なので、再発の可能性もあります。そうならないように、寝る前に腰のあたりをゆらゆらと揺らす運動を勧めました。また『Northwest Superglass®』でスムーズに歩けるにようになり歩幅が大きくなり、歩行スピードが上がったのが私から見てもよくわかりました。でもそれによって今まで使えていなかった足首を使うので疲労や痛みが伴う場合があります。そのときのために足首を動かす運動も勧めました。こうして施術や『Northwest Superglass®』だけでなく、日々自分でメンテナンスを行うことが、痛みから解放されるためには欠かせません」
撮影/金井真一、取材・文/峯澤美絵
山岸茂則さん
専門理学療法士(運動器系)。『SONA高田』院長。専門学校卒業後、飯山赤十字病院リハビリテーション科に22年勤務。舟波真一氏とともに「バイニーアプローチ」という独自の治療法を開発し、独立し現在に至る。施術だけでなく、講演会、講習会なども行う。著書は『痛みはうつぶせで治しなさい: 腰痛、ひざ痛、肩こりのない長持ちするからだをつくるには』(小学館)ほか
Northwest Superglass®
(ノースウェスト スーパーグラス)
主な特徴
『Northwest Superglass®』を組み込んだ独自の施術法と経営ノウハウの確立で安定した施設運営を実現
Contents
1日平均40~45人もの患者様が訪れる京都府京田辺市『三日月整骨院』。開業して今年で6年目になる。整形外科での勤務を経て、独立・開院に至った経緯について、院長の町田結希さんに聞いてみた。
町田さん「大学を卒業してから専門学校へ3年通い、柔道整復師の資格を取りました。その後は整形外科で勤務し、医師の指示のもと、骨折や脱臼、打撲、捻挫といった外傷の処置やケガによってずれてしまった関節などを正常な位置に戻す整復、施術やリハビリなどに従事していました。その方法は関節の動きをみたり、筋肉をほぐしたりというオーソドックスな手法です。
そのようなときに、自分が行っていた手法とまったく異なるアプローチでケガや腰痛、ひざ痛などの慢性痛を緩和させる施術方法に出合ったのです。それが『BiNI(バイニー/バイオメカニクス+ニューロサイエンス)アプローチ』。
具体的なきっかけとしては、私自身が足を怪我したことでした。なかなか改善に向かわないなか、Dr.SONA高田の院長である山岸茂則先生に施術いただいたことです。今までの自分の施術の方向性とも全く異なるアプローチでしたが、その効果を自分の身体で驚きをもって実感しました。
このバイニーアプローチの特徴は、凝り固まった膜組織(骨や筋肉、内臓がバラバラにならないように全身を覆っている膜)を緩めることで神経や血管をリリースさせ、めぐりのいい体にする施術方法です。三日月整骨院へお越しくださる患者様には、“ゆっくりだけど、着実にゆがみを矯正しているんですよ”とお伝えしています。首まわりを中心に、硬くなった膜組織の部分に手を当てて、本当に微細なゆらゆらの刺激を与えることでほぐしていきます。この微細な刺激が心地よいこともあり、施術中にうとうとされる患者様も多数いらっしゃいます。
当時の勤務していた整形外科での施術にバイニーアプローチを取り入れてみると、症状が軽減、緩和、回復していくのが手に取るようにわかりました。ただ勤務先には勤務先の施術方法がありました。
そこで、このバイニーアプローチを軸に独立してみようと思い始め、バイニーアプローチを一通り学んだタイミングで独立しました。もともと組織に属するのも苦手だったということも独立を志した背景にはあります(笑)」
ここで町田さんの持ち前の行動力が遺憾なく発揮された。さらにバイニーアプローチについての勉強をしつつ、その一部を施術に取り入れながら経験を積み、整形外科での3年の勤務後、独立。ただし、独立後の運営は決して順風満帆ではなかったのだそう。
町田さん「資金も見込みの患者様もなく独立したのです。1日5人の患者様にお越しいただければ多いといった状況が続き、時には一人も患者様がいない日も相当数ありました。開業して半年くらいして、このままでは当院の運営を維持できないと判断し、新たな施策の導入に向けて動き始めたのです」
この時期を境に、三日月整骨院の運営面における仕組みづくりが動き始め、現在の順調な施設運営を支える、後述のビジネスモデルである「町田モデル」の構築につながった。
まず手掛けたことはWEBサイトの作成、そしてWEBマーケティングだった。
町田さん「より多くの患者様に認知していただくために、Webマーケティングの専門家に相談してWEBサイトの開設とWEBマーケティングの準備を始めました。WEBサイトを作るにあたってフォーカスしたことは3つだけです。
1つはできるだけ多くの症例に対応できることを明確にすること。これはバイニーアプローチがいろいろな症状の根本的な原因に対応できる手法であることを背景とした、施術家としての私の特長を、患者様の立場から表現したものです。
2つ目は有名な方の推薦文と患者様の声を載せること、経験の浅い私の信用を補完していただくというのが狙いです。
3つ目は自分の生い立ちを含め、どのような思いで患者様の施術に当たっているのかというメッセージです。多くの病院や施術院を回っても痛みや不具合が改善しない、といった患者様も多くご来院されます。そのような方も含めて多くの患者様は、施術家の思いや姿勢をご理解された上で”この人なら相談してみたい”と思われることが多いためです。
WEBマーケティングの専門家の方にこの3つを何度も添削していただき、完成させました。これらのことは、一見当たり前のことと思われがちですが、しっかりと表現できていないWEBサイトが案外多いことに気づき、専門家のアドバイスを素直に受けられることができました。幸か不幸か、まだ患者様も少なく時間もあったので(笑)、5か月かけて作りました」
三日月整骨院のWEBサイトには、施術家を目指すに至ったきっかけやどのような思いで施術をしているのかなどが詳細に記載されており、町田さんの誠実な人となりが伺える。このようにして制作された三日月整骨院のWEBサイトの開設に合わせて、検索したキーワードに連動して広告が掲載されるリスティング広告も始めたとのこと。
町田さん「WEBサイト開設と同時に行ったリスティング広告には、月7万円と予算を決めて投資を行っています。本リスティング広告による患者様お一人の獲得費用は、2,500円程度と試算しています。月間の新規の患者は30~40人。そのうち6~7割がリスティング広告を見て来院されています。つまり、月に40人の患者様のうち7割がリスティング広告によるものだとすると、7万円 ÷(40人×70%)=2,500円という計算です。初回来院後のメンテナンスのための通院も含めて継続的にご来院いただけているという事実を踏まえ、費用対効果は十分な水準と考えています。これはできるだけ多くの症例別のランディングページ作成し、WEBサイトに掲載したことで、例えば、「京田辺市、 腰痛」といった検索に対して、当院がすぐにヒットするように仕掛けたことの成果です。
リスティング広告以外には、集客のための施策は打っておらず、既存の患者様からの紹介や当院の前を通って知った方という構成なので、WEBサイトの作成とリスティング広告の効果は大きいと評価しています。特に、見込み顧客がほぼゼロであった独立直後の顧客基盤の構築にとても有効な手法であったと考えています」
3.「町田モデル」を支える独自のマニュアルで患者様の来院の継続率がアップ
WEB関連の施策が奏功し、新規で来院いただく患者様が増加したことで、次に考えなければならないのが、継続的に来院いただく率を上げることだ。きちんと施術の成果を出すためにも、メンテナンスも含めて、継続的に通院いただくための工夫が必要となる。町田さんが構築した整骨院の運営に関するビジネスモデルである「町田モデル」においては、上記の集客のための施策と合わせて継続率の向上がビジネスモデルの根幹を成す。
町田さん「施術家として、多くの方と接する仕事をしているのにもかかわらず、私自身は話上手でもなければ、気の利いた楽しい会話もできないんです(笑)。そこで考えたのが、接遇などを中心としたマニュアルづくり。これは自分のためでもあるし、臨床経験が豊富ではないスタッフが入ってきたときの教育という目的もありました。そのような新人スタッフであっても、しっかり売上を立てられる仕組みを作りたいと思ったからです。当院のような規模では、新人スタッフであっても売上への貢献は必須ですし、何よりも、スタッフ本人のやる気にもつながります。まずは自分もマニュアルに記載のある事項を徹底的に覚えましたし、繰り返しバージョンアップも行い、現行のマニュアルが完成しました」
マニュアルを策定している整骨院等も多いと思われるが、三日月整骨院におけるマニュアルにはどのような特徴があるのだろうか。
町田さん「マニュアルというと施術方法なども含めて事細かに記述があって、施術家の行動を束縛するものとお感じになられる施術家もいらっしゃるかもしれません。他方、私が目指したマニュアル策定の目的は大きく異なります。むしろ、施術家にとって患者様の症状を改善するための自由度を確保したい、ということを強く意識していました。
私も含めて独立を目指す施術家は、自分が信じた施術を行い患者様の悩みを解消して、喜んでいただくことを目指していると思います。そして、私が施術で用いているバイニーアプローチは着実に成果が出るのです。ただし、その成果を積み上げることや日常生活の中で身体を整えるためのメンテナンスのためにも時間を要します。そのため、患者様にご満足をいただけるだけの施術の時間を確保し、その後も一定の間ご通院いただくことがとても大事な前提となります。この前提を整えることが私の作ったマニュアルの大きな特徴です」
患者様に対する施術の時間の確保し、その後も一定の間、継続的にご来院いただくことを施術の大きな前提としている町田さん。その点について、マニュアルには、具体的にはどのようなことが記載されているのだろうか。
町田さん「当院のマニュアルは120ページ以上にも及びます。中身については、施術に関する基本的な考え方、接遇、クロージングなどの項目について記載しています。施術内容であれば、体のゆがみが出る仕組みの説明の仕方や、趣味でスポーツをされている方であればそのスポーツ特有の体の使い方による故障の種類など。患部に対する手技の詳細にわたる説明や規定はこのマニュアルにはなく、施術内容については、スタッフの自主性に任せています。もちろん、マニュアル以外のところで手技についての指導は行いますが。こうして患者様の症状に寄り添う接遇を行い、しっかりと患者様の症状を改善することで、患者様との信頼関係の構築に寄与し、継続的なご来院につながります。
少し具体的にご説明をいたします。
当院では保険診療以外にも自費診療も行っています。前述のとおり、施術については、バイニーアプローチに基づいています。バイニーアプローチは、柔道整復師が保険対応できる症例以外にも幅広く対応することができます。また、その手法の特性上、ゆっくりでありながらも着実に施術の成果を実現するために、最低6回は通っていただき改善を目指すようにしています。
他方、保険診療については対応できる症例が限られるだけでなく、施術院の運営という側面からは、施術の時間も短くならざるをえないのがが現状です。
そこで、当院にご来院いただく患者様には、自費診療をお勧めいたします。しかし、自費診療の提案について、費用負担のご説明を行うことに大きな心的負担が伴うことに、初期の段階で気づきました。施術の度に患者様に負担をお願いする私自身もスタッフも、それを毎回聞き、都度都度ご判断いただく患者様にも、両者にとって大きなストレスになるのです。
そこで、費用負担が大きくなる自費診療部分については、プリペイドカード(当初は回数券)の購入をお勧めすることを決め、その説明に関するノウハウをマニュアルに記載したのです。このプリペイドカードは、結果として1回ごとの支払いよりも負担が軽減されること、無期限であること、ご家族ともご共有いただけることなど患者様にとってもメリットを実感いただける設計となっています。施術計画と併せてプリペイドカードを用いた費用負担についても明確に説明することで、多くの患者様にご納得いただいた上で、継続的にご来院いただけるようになりました。結果として、私たちも施術に集中することができ、症状の改善といった成果を実現できるようになりました。
上記の内容も含めて当院のマニュアルは、多岐にわたる内容がカバーしているため、覚えて自分のものにするのも大変だと思います。スタッフと仕事の合間や仕事後にロールプレイングを繰り返し行い、答えられなかったことについては、“次までに自分の頭で考えておいてください”と自分で回答を導き出せるように促しています。その結果、臨床経験が十分でないスタッフでも、3か月程度で基礎的な対応をできるまでに成長してくれます。
このマニュアルに基づいてスキルを磨くことで、保険適用外の症例にも対応することができ、患者様にしっかり向き合うための施術時間の確保ができます。そうすれば、施術に集中し、患者様の症状の改善を実現するだけでなく、施術のなかで技術を磨いていくことにもつながります。これが当院におけるマニュアルを活用することの意義だと思っています」
こうして確立したのが現在の順調な施設運営を支えるビジネスモデルである「町田モデル」だ。患者様の症状の改善を通じて、患者様との信頼関係の構築・信用度の向上という通過点を経て、経営の安定を実現し、より多くの患者様に良質な施術サービスを継続的に提供できる経営基盤の構築を可能にしている。
町田さん「幅広い症状に対応できるバイニーアプローチという独自の施術手法、その手法に対する認知度の向上の仕組みをWEBサイトの開設やWEBマーケティングによって構築しました。そして継続率を向上する施策として、徹底したマニュアルづくりをしたのです。
その結果、患者様の症状の改善を通じて、患者様との信頼関係を築くことにつながったと思います。一度いらしていただいた患者様は、その後、ご家族やご親戚にも当院を紹介いただき、ご家族皆様で通ってくださっています。このように、ホームドクターのように利用してくださる患者様が多くいらっしゃいます。もちろん、お友達をご紹介いただく患者様も多数いらっしゃいます。そのおかげもあって、経営が安定し、より多くの患者様に良質な施術サービスを継続的に提供できる経営基盤の構築を可能にしたのだと思います」
4. 初診の7~8割の患者様に『Northwest Superglass®』を提案
「一人でも多くの患者様の痛みや不具合をなんとかしてあげたい」と切に願い、独自の施術方法に組み込む形で、町田氏が提案しているのがNorthwest Podiatric Laboratory(NWPL)社のファンクショナルオーソティックス®(足の動きを最適化するための医療用足底挿板)『Northwest Superglass®』だ。
町田さん「より効果的かつ効率的な施術を行うために、当院ではカスタムメイドのファンクショナルオーソティックス®であるNorthwest Superglass®を施術に組み込んでいます。バイニーアプローチを基軸にした施術とNorthwest Superglass®の相性はとても良いのです。
当院では腰痛、肩こりといった悩みの方の割合が高いですが、実は足元に問題がある場合が非常に多いです、もちろん、外反母趾といった足の悩みを抱えられた方も多数いらっしゃいます。その足元を整えるための道具として、Northwest Superglass®を自信をもってご提案しています。
Northwest Superglass®をお勧めするに際して、患者様には、人の体をテントに例えて説明しています。人の体のゆがみはテントが傾いている状態と似ていています。テントのシートを筋膜などの膜組織、支柱を骨に例えているのですが、シートが左右どちらかに傾いているとそれに引っ張られて支柱も傾きます。その状態が続けば、引っ張られたシートは負荷がかかり過ぎて劣化が早まります。人間の体だとそれが痛みやこりとして現れます。そのような状態を回避するためにも、シートを正常な位置にすることで、支柱も適切なポジションに戻すことができます。これはバイニーアプローチを基軸とした私の施術で実現できることです。
そして、テントの適切な状態を維持するには安定した地面が必要です。でこぼこなところにテントを建てるのではなく、平らで安定したところに建てることでいい状態をキープすることができるのです。
足に関して言えば、その安定を与えてくれるのがNorthwest Superglass®なのです。テントのシートが歪みなく張られ、支柱が安定した状態をキープする、このことは各施術の効果を持ち越すことを意味します。このように施術の基本方針にNorthwest Superglass®を組み込むことによって、施術の効果が積み上がり、結果として足や身体の不具合が改善していくことにつながるのです。このように丁寧に説明することで、患者様にもNorthwest Superglass®の必要性をご理解をいただけるのです」
だからこそ初診の診察は十分な時間をかけるとのこと。初診では『Northwest Superglass®』を購入しない患者様も、数回施術を重ねると、その必要性を理解して購入にいたるケースも多いという。
町田さん「初回で施術方針と、施術の効果を持ち越すためにNorthwest Superglass®が有効であることを理解していただくことを十分な時間をかけてご説明いたします。その結果、初回でご購入をされない患者様でも、2回目以降の施術でNorthwest Superglass®の必要性をご理解され、購入を決断される患者様がほとんどです。なかには、”こんなに楽になるのであれば、もっと早く決めておけばよかった”とおっしゃる方も多数いらっしゃいます」
5.患者様への説明に用いる三種の神器
綿密な戦略と経営方針で独立後、着実に医院の運営を行っているかのように思えるが、『Northwest Superglass®』を扱い始めた頃、オーダーをいただいた後にキャンセルが続いたという苦い思いもしたのだとか。
町田さん「今思えば、一方的に商品の説明をしてしまっていたのかもしれませんね。でもこの失敗は自分にとってとても意味あるものでした。それからはどうしたら患者様にNorthwest Superglass®の必要性を理解していただけるか、施術後も体のいい状態をキープでき、悩みを一緒に解決できるのかを考えました」
その結果たどり着いた結論は、原点に戻り、痛みを繰り返す原因などを簡潔に、わかりやすく説明することだったそう。
町田さん「ただし、全員に同じように説明するのではなく、相手の興味の程度に合わせて説明します。その際に、決してNorthwest Superglass®を強要するのではく、”あなたの体がこんなふうに動けたらいいですよね”などと説明し、患者様から”そうですね”という同意を何度も重ねてもらい、納得してもらった時点でようやくNorthwest Superglass®をお勧めします。だから私が必要だなと思っても、相手も同じように必要だと思っていない患者様には勧めません。こういうやり方に変えてからは、オーダー後のキャンセルはなくなりました。これはかつてキャンセルをいただい患者様が私に気付きを与えてくださったおかげだと思っています」
町田さんと同じように柔道整復師などの資格を持った方で、独立を考えながらも、資金や集客への不安から一歩を踏み出せない方も多いのでは。
町田さん「独立を考えておられるのであれば、失敗してもいいから、ぜひ挑戦されて欲しいと思います。万が一、失敗しても、柔道整復師などの技術があれば、病院や介護施設などでは、圧倒的な人員不足で、必要とされる貴重な人材であるため一定のセーフティネットがある状態です。
私自身、自分の信じた施術方法で多くの患者様と向き合い、お喜びの声をいただくことで、とても充実した日々を送り、自身の成長も実感しています。
そして、そのような多くの患者様に支えていただくことで、三日月整骨院の運営も新型コロナウィルス感染症の感染拡大という困難な時期を経ても非常に安定しています。
このような自分の経験をお伝えして、これから独立を目指す方のお手伝いも積極的に行っていきたいと考えています。ご関心のある方は、是非お声掛けいただけばと思います」
撮影/シラタニタカシ、取材・文/峯澤美絵
お話をお伺いした方
町田結希(まちだゆうき)さん
柔道整復師、バイニーアプローチ本コース修了。三日月整骨院の院長。整形外科や介護施設、数多くのスポーツの現場でのトレーナー経験を経て2017年現職に。小学2年生から競技としてスキーをはじめ、現在も京都府代表としてクロスカントリースキーで国体に出場。趣味はトレイルランニング、華道、料理と守備範囲が広い。アロマセラピーにも精通している。
(ミカヅキセイコツイン)
院長: 町田 結希
〒610-0334 京都府京田辺市田辺中央3丁目3-10 シークビル1階
HP:https://mikazuki-seikotsu.com/
TEL: 0774-51-6957
三日月整骨院における施術の一環として用いられているNWPL社のNorthwest Superglass®
主に病院や治療院において、治療や施術のために処方される医療用のファンクショナルオーソティックス®(足の動きを最適化するための医療用足底挿板)。
NWPL社の製品におけるフラッグシップモデルであり、技術革新をリードしています。
お一人おひとりの足の特徴を把握した上で、独自のデバイスであるSmart Cast®システムをもちいて足型を採型、製作する完全フルオーダーメイド。世界にたったひとつの医療水準のサポート力を有するインソールがあなたのお手元に届きます。
足の症状に対応するために、スタンダードなものから、例えば、後脛骨筋腱機能不全症や扁平足変形といった症状に対応する特殊形状のもの、靴の種類への対応という観点からはハイヒールにも対応しています。
Our Story:若き施術家の挑戦。より多くの人の「痛みのない生活」の実現のために 第2回(腰痛・ギックリ腰)腰痛から解放されて農作業が楽しくてたまらない
Contents
「三日月整骨院」に来られる患者様のなかで最も多い症状のひとつが腰痛。一度はよくなっても繰り返したり、慢性痛で日常生活に支障をきたしたりしている人が多いという。農業を自身で営みながら、後進に農業を教える立場でもある神川健太さんもその一人。中腰での作業、農作業の道具や野菜の積み下ろし……。神川さんが従事する農作業には腰への負担を強いるものが多い。
神川さん「農業を始めて15年になるのですが、20代のころは体力もあって無茶がきいたんです。ところが30代に入ると体にガタがきて腰痛を発症しました。農作業をした後は腰がパンパン、日常生活の中ではぎっくり腰を繰り返し、腰がぐらぐらという感じでしたね」
町田先生「初めていらしたときは、まずは患部である腰と体を支える腹圧の高さをチェックしました。腰まわりを触診したところ、仙腸関節のはまりがよくないことがわかりました。仙腸関節とはお尻の割れ目の上あたりにある仙骨と、その両隣にある腸骨とで形作られている関節です。ここのずれによって慢性的に腰痛に悩んでいる方は多くいます。また体を支える腹圧が低いこともわかりました」
神川さん「仙腸関節のはまりの悪さに関しては、自覚はまったくありませんでした。しかも、その原因は仙腸関節そのものではなく、実は足元の不安定さに原因があるという説明を受けました。正直びっくりしました。腹圧に関しては、先生に体を押されて体を安定させておけるかといったバランステストをしたのですが、見事に体勢を崩してしまったのです。実は僕、学生時代にサッカーをしていたこともあって体幹部には自信があったんですけどね……。ただこうして患部だけの対処療法ではなく、根本的な原因を追究してくださる根本な対応をしてくださり、”この先生は信頼できる!”と思い、メンテナンスも含めてもう5年間お世話になっています」
仙腸関節のゆるみが足元に原因があること、それによって腰痛が引き起こされること、同時に、腹圧が低いことも腰痛の原因となっている……。神川さんの腰痛の根本的な原因はどこにあったのだろうか。
町田先生「仙腸関節のゆるみを診たあとに、足元はどうなっているかをチェックしました。すると後足部が不安定だったのです。これによって歩行などで着地したときにかかとが内側に倒れるオーバープロネーション(過剰回内)という現象を生んでいました。こうして足元が不安定だと、下半身全体に大きく影響します。
かかとが内側に倒れると、それにつられて膝が内側に倒れやすくなります。さらにバランスをとろうとして今度は骨盤が外に開きやすくなります。その結果、骨盤の一部である仙骨と腸骨が離れてしまって仙腸関節のはまりが悪くなるのです。本来なら骨盤が安定していることで上半身の土台をするのですが、それがぐらぐらしてしまうと、腰の筋肉を過剰に使って体を支えなくてはなりません。関節がしっかりかみ合わないことで支える機能が十分に発揮できないため、その代償として腰の筋肉に無理を生じているのです。神川さんの腰の筋肉はいつもパンパンの状態になるのはそのためです。
そしてもう一つ、神川さんのように足元が不安定だと、腹圧が下がるという臨床において多くの症例が確認されています。その結果、カラダを支えるために腰の筋肉が酷使されることになります。このような複合的な要因を背景として、神川さんの腰痛は引き起こされているのです」
神川さん「この話を聞いて腑に落ちましたね。腰が痛いから腰だけマッサージをしてもらったり、電気を当ててもらったり、鍼を打ったりと、とにかく対処療法に多くの時間を割いてきました。だから整骨院をめぐること30軒にもなるのになかなかよくなりませんでした。しかし、町田先生は腰痛の根本的な原因を丁寧に説明してくださったので、見直すべきは足元なんだということがわかりました」
町田先生「とはいえ、神川さんの足元の不安定さはさほど深刻ではなかったので、まずは既成のファンクショナルインソールであるSUPERfeet®を提案しました」
神川さん「初診のときにしてもらったバランステストですが、SUPERfeet®を装着して行うと、先生に押されても体勢を崩さずにいられました。これには驚きました。先生に聞いてみると、足の動きを最適化することを目的に開発・製造されているSUPERfeet®によって腹圧が高まって体幹部分が安定したとのこと。体感と先生の説明が完全に一致していることから納得して、すぐに購入しました。はじめて履いたときは歩くのがとても楽になったのを覚えています。
ただ、SUPERfeet®を1年くらい使ってずいぶん傷んできたということと、農業を教える丹波に単身赴任となり、三日月整骨院になかなか通えなくなったのを機に、自分の足にカスタマイズが可能であり、より高いサポート力があるNorthwest Podiatric Laboratory(NWPL)社のファンクショナルオーソティックス®、『Northwest Superglass®』を町田先生からご提案をいただき、購入することにしました」
神川さんが使用するようになった『Northwest Superglass®』は、足の動きを最適化するための医療用足底挿板(ファンクショナルオーソティックス®)のこと。ファンクショナルは直訳すると”機能的な”という意味だが、ここでの意味は、本来足に備わった機能を取り戻す、という意味合い。まずは、患者様の足をニュートラルポジション(個々人の足の骨格に備わっている本来あるべき自然な位置)に整え、iPadに特殊なデバイスを追加したSmartCast®システムで採型。そのデータをNWPL社に送信し、アメリカ足病医学の下肢バイオメカニクス理論に準拠し、一足一足手作業で作る世界で唯一のオーダーメイドインソールが誕生する。
神川さん「農作業の多くは長靴で行います。これがすごく疲れるんですよね。足にもぴったり合っていないから抜けないように踏ん張らないといけないし、インソールはなく、ただのゴムだから全然サポートもない。でも『Northwest Superglass®』を入れたら立ち仕事が圧倒的に楽になりました。かかと重心という自覚があったのですが、いい感じに前傾姿勢がとれるようになり、体幹部で体を支える感覚が得られたのです。この感覚が、腹圧が上がったことの成果ということでしょうか。歩行の楽さに関してはSUPERfeet®と共通していて、スムーズに足運びができます」
『Northwest Superglass®』を開発・設計および製造しているNWPL社は、SUPERfeet®を製造している会社の大元の会社である。だから、足に備わっている本来の機能を取り戻すという根本的な設計思想は同じ。装着した感覚に共通点があるのはそのためだ。
町田先生「神川さんへのふだんの施術は腰まわりの張った筋肉をほぐしたたり、仙腸関節のずれを整えたりすることを中心に行っています。ただ仙腸関節のずれの原因は足元の不安定さにあるのでその部分は『Northwest Superglass®』に任せています。そのため、施術のスパンが空いてしまったとしても、以前のように頻繁にぎっくり腰になることが少なくなり、施術の持ち越し効果が発揮できていると思います」
神川さん「野菜の積み下ろしの作業や、しゃがんで片方の手で鎌をもって、長時間同じ体勢で小松菜や水菜といった葉物を収穫するときの腰の負担は圧倒的に減りました。また寝返りを打ったり、なにかを拾おうとしてふとした拍子にぎっくり腰になっていたのも、3ヵ月に1回から1年に1回と驚くほど頻度が減りましたね。30軒も接骨院などを回って腰痛が改善しなかったから、私の腰痛を治せる人って実は誰もいないんじゃないかって思っていたんですよ(笑)。だからこうして腰痛が軽減したことがとてもうれしくて、農作業が楽しいです」
撮影/シラタニタカシ、取材・文/峯澤美絵
お話をお伺いした方
町田結希(まちだゆうき)さん
柔道整復師、バイニーアプローチ本コース修了。三日月整骨院の院長。整形外科や介護施設、数多くのスポーツの現場でのトレーナー経験を経て2017年現職に。小学2年生から競技としてスキーをはじめ、現在も京都府代表としてクロスカントリースキーで国体に出場。趣味はトレイルランニング、華道、料理と守備範囲が広い。アロマセラピーにも精通している。
(ミカヅキセイコツイン)
院長: 町田 結希
〒610-0334 京都府京田辺市田辺中央3丁目3-10 シークビル1階
HP:https://mikazuki-seikotsu.com/
TEL: 0774-51-6957
三日月整骨院における施術の一環として用いられているNWPL社のNorthwest Superglass®
主に病院や治療院において、治療や施術のために処方される医療用のファンクショナルオーソティックス®(足の動きを最適化するための医療用足底挿板)。
NWPL社の製品におけるフラッグシップモデルであり、技術革新をリードしています。
お一人おひとりの足の特徴を把握した上で、独自のデバイスであるSmart Cast®システムをもちいて足型を採型、製作する完全フルオーダーメイド。世界にたったひとつの医療水準のサポート力を有するインソールがあなたのお手元に届きます。
足の症状に対応するために、スタンダードなものから、例えば、後脛骨筋腱機能不全症や扁平足変形といった症状に対応する特殊形状のもの、靴の種類への対応という観点からはハイヒールにも対応しています。
Our Story:若き施術家の挑戦。より多くの人の「痛みのない生活」の実現のために 第3回(姿勢改善・パフォーマンスアップ)施術と『Northwest Superglass®』で姿勢が改善。疲労の軽減、自己ベストの更新も実現!
Contents
腰が痛い、膝が痛い、肩がこる、腕が上がらない……といった痛みや不具合は症状が重いほど、治療や施術の緊急度が増してくる。しかし、姿勢やスポーツをするときのフォームがよくないなどは、気にはなっているものの、ケアをしない人、もしくは意識的な努力によって正そうとする人が多いのではないだろうか。ところが、日々水泳に励む増井陽太くんの母親も水泳のコーチもともに、彼の姿勢の悪さを気にしていた。その相談先が「三日月整骨院」だった。
増井君「母親からもコーチからも姿勢の悪さを前から指摘されていたんです。でも、自分自身は実はそれほど気になっていなかったのが本音なのですが。あるときコーチに、水中でも姿勢は大切で、姿勢を正すことで水の抵抗が減って記録更新につながる、というアドバイスをいただきました。
この言葉が響いたんです。水泳を頑張っているからには記録を伸ばしたい、ゆくゆくはインターハイに出場したいと思っているので」
町田先生「初診の際に、お母様が日常生活で、特に座り姿勢の悪さを気にされていたので、背骨がどのような状態なのかを診ました。ぱっと見て、座ったときに骨盤が少し後傾して腰が丸まりやすいなという印象を受けました。そして、実際に背骨のどのあたりに影響が出ているのかを触診。すると腰のあたりから右にねじれている、側弯していることがわかったのです」
増井君「先生からそのことを聞いて、真っ先に頭に浮かんだのが、水中に飛び込んでから浮き上がる瞬間、自分の体が傾いていること。飛び込むときは真正面を向いているのに、泳ぎ出すときに体が傾いてしまって、水の抵抗を大きく受けてしまう原因が姿勢にあることがわかりました。座り姿勢の悪さが水泳にも影響していることに気づいたのです」
町田先生「まずは姿勢の悪さに気づいて指摘したお母様とコーチが素晴らしいと思いました。子どもはこうしたことに自分ではなかなか気づけませんし、気づいたとしてもどうしたらいいのかわからない子がほとんどです。筋肉や関節に柔軟性がある子どものうちに、姿勢や体のゆがみに気づいて手を施すことで、大人より改善のスピードが圧倒的に速いことを日々の施術の中で感じています。
ですので、こうして早い段階で子どもの体に気づくことはとても大切なこと。加えて、増井君の場合は、自分で考えながら水泳をしているので、姿勢のよしあしが泳ぎのフォームに影響するということをすぐに理解できたことも、改善に近道になったと思います」
では姿勢の悪さは何が原因なのだろうか。普段の体の使い方のくせなのか、それとも筋力不足なのか……。
町田先生「背骨の側弯の原因は左右の腹圧に差があってどちらかの腹圧が低いのでは、と思いまず並進バランステストをしたのです。これはいすに座って、足裏を床につけない状態で、私が増井君の体を軽く押したとき、その力に耐えられるどうかをチェックするテストです。見事に崩れましたね(笑)。特に右の腹圧が低かったので、体が右側に歪んでしまう状態でした。実際には左右ともに体を押したときにはすぐに体勢が崩れまったので、全体的に腹圧が低かったのですが……」
増井君「”腹圧”という言葉はコーチから、いいフォームをキープするうえで大切ということは何度も聞いていました。ただ僕自身、腹圧が低いという自覚はありませんでした。むしろ、1日10㎞泳ぐなどハードな練習をしているので、自信があったくらいです。ところが先生に軽く腕を押されただけで、全身のバランスが保てなくて体勢を崩してしまいました」
町田先生「さらに腹圧が低いことは足に問題があるという仮説を立て、次に足をみてみると、後足部が不安定だったことがわかりました。後足部が不安定というのは、歩行の着地の際にかかとが内側に倒れてしまうのです。するとどうなるか、アーチがつぶれてしまって土踏まずがべちゃっと地面についてしまうのです」
姿勢を支えるキーワードである腹圧。増井君の腹圧が低下していたのは、土踏まずがべちゃっと地面についてしまう足の問題だったのだ。ではいったい腹圧とは何なんだろうか、体幹を支える筋力の強さとは別ものなのだろうか。
町田先生「腹圧とは腹部にかかる圧力で、お腹の中から外へ押す力のこと。お腹の中にパンパンに膨らんだ風船(=圧力が高い)が入っているようなイメージです。風船に空気が入っていれば、体は崩れようがないので安定した状態になります。一方、体幹部は腹部や背中、胸といった胴体全般のことで、これらの筋肉が強いことで身体が安定します。
大きく違うのは、腹圧は脳によって適正にコントロールされているのに対して、体幹の筋肉は鍛えることで強くなります。そして、腹圧を高めるのは、実は足裏のとある部分を刺激すること、というのがバイニーアプローチを用いた臨床事例の積み重ねで検証されているのです。その部位は、足裏のかかとから小指にかけての足の外側の部位なのです。逆に、土踏まずを触るなどして刺激を与えると腹圧は下がってしまいます。ですから、足元が不安定で、アーチがつぶれやすく、土踏まずが地面についてしまう増井君は腹圧が低かったのです」
出所 : 第50回長野県理学療法学術大会 山岸茂則氏プレゼンテーション
赤い部分に刺激が加わると腹圧は下がり、青い部分は上がる。つまりアーチが下がって土踏まずが地面についてしまうと腹圧が下がりやすい状態になってしまうということ増井君「僕が先生のお話の中で一番驚いたのが、筋トレのように努力せずに、足裏に適切な刺激を入れるだけで腹圧が高まるということです。体を安定させるために、トレーニングの一環として王道の筋トレを取り入れています。意識して腹筋や背筋を使って鍛えるので、これはこれで体を安定させるには必要なトレーニングだと思っていますが、これ以外に足裏に適切な刺激を入れるだけで、腹圧をコントロールできてしまうことにびっくりしましたし、実際、僕もそれを実感しました」
足裏に刺激を入れるとは、町田先生はどのような手法を使ったのか。実はそれはNorthwest Podiatric Laboratory(NWPL)社の『Northwest Superglass®』というファンクショナルオーソティックス®を施術に組み込むことだった。これは足部を専門に診るアメリカの足病医学の考え方をもとに、一人一人足を採型して作られるカスタムメイドの医療用のインソールで、歩く、走るなどといった動きのなかで、足の機能を最適化してくれる。
増井君「並進バランステストのときも、先生がサンプルのインソールを僕の足裏にあてただけで、押されても体勢が崩れなくなったのです」
町田先生「インソールというと、土踏まずを持ち上げるものというイメージが強いと思いますが、当院で処方している『Northwest Superglass®』は根本から発想が異なります。土踏まずよりももう少し後ろで、くるぶしの下あたりにある載距突起という部位を支える設計になっています。
土踏まずを持ち上げてアーチを作ろうとするのではなく、動きの中で適切にアーチが形成されるようにサポートします。というのも、アーチを持ち上げると、上記の赤い部分を刺激してしまいますよね。発想が異なるというか、形を作るのではなく、適切な足の動きの実現をサポートするのです。
結果として、足の動きの中で適切なタイミングでアーチが形成され、足裏の適切な部位に適切な刺激が入ります。足の動きが最適化されるため腹圧が高まる、ここがポイントなのです」
増井君「『Northwest Superglass®』は靴に入れて履いて歩くだけで腹圧が高まるなら、こんなに便利なものは他にはないんじゃないかと思って母親に相談して買ってもらいました。初めて靴に入れたとき、踏み込みやすく、歩きやすい感覚がすぐにわかりました。だから体育の授業のときや部活前のランニングのときには、必ず靴に入れています」
増井君「中学時代は中長距離の自由形で大会に出ていました。距離は200m、400mなのですが、後半になるとフォームが崩れて苦しそうとコーチから指摘を受けました。自分でもいろいろ工夫もしたし、練習も頑張ったけれどなかなか改善しませんでした。そのうえ、高校生になって、練習がハードになった分、疲労感も増しました。しかし『Northwest Superglass®』を使い始めて1か月くらいしたころ、コーチからフォームがよくなってきたと褒められたのです。練習後の疲労感も減りました。
『Northwest Superglass®』を使い始めて半年くらいになるのですが、1年前と比べて400mの自由形の記録が5秒も伸びたんです。ハードな練習はもちろんのこと、練習の成果を最大限に引き出してくれる『Northwest Superglass®』と、メンテナンスで診てくださる町田先生のおかげです。早くインターハイに出られるようにもっともっと速く泳げるようになりたいです」
撮影/シラタニタカシ、取材・文/峯澤美絵
お話をお伺いした方
町田結希(まちだゆうき)さん
柔道整復師、バイニーアプローチ本コース修了。三日月整骨院の院長。整形外科や介護施設、数多くのスポーツの現場でのトレーナー経験を経て2017年現職に。小学2年生から競技としてスキーをはじめ、現在も京都府代表としてクロスカントリースキーで国体に出場。趣味はトレイルランニング、華道、料理と守備範囲が広い。アロマセラピーにも精通している。
(ミカヅキセイコツイン)
院長: 町田 結希
〒610-0334 京都府京田辺市田辺中央3丁目3-10 シークビル1階
HP:https://mikazuki-seikotsu.com/
TEL: 0774-51-6957
三日月整骨院における施術の一環として用いられているNWPL社のNorthwest Superglass®
主に病院や治療院において、治療や施術のために処方される医療用のファンクショナルオーソティックス®(足の動きを最適化するための医療用足底挿板)。
NWPL社の製品におけるフラッグシップモデルであり、技術革新をリードしています。
お一人おひとりの足の特徴を把握した上で、独自のデバイスであるSmart Cast®システムをもちいて足型を採型、製作する完全フルオーダーメイド。世界にたったひとつの医療水準のサポート力を有するインソールがあなたのお手元に届きます。
足の症状に対応するために、スタンダードなものから、例えば、後脛骨筋腱機能不全症や扁平足変形といった症状に対応する特殊形状のもの、靴の種類への対応という観点からはハイヒールにも対応しています。
Our Story:若き施術家の挑戦。より多くの人の「痛みのない生活」の実現のために 第4回(膝痛・変形性膝関節症)膝痛が改善、手術も回避!自転車こぎもしゃがみこみも、立ち仕事もすべての動作が快適
Contents
厚生労働省が平成28年に行った国民生活基礎調査によると、肩こり、腰痛に続いて三番目に自覚症状が多いのが膝痛を含む手足の関節の痛みだ。「三日月整骨院」でも腰痛に次いで相談が多い症状なのだそう。長年、膝痛に悩む青木征美さんもその一人。整形外科、整骨院で数々の治療や施術を受けたものの、変形性膝関節症の症状が進むばかりで不安になり、駆け込んだのが「三日月整骨院」だった。
青木さん「膝の痛みは、実は高校時代にバスケットボールをしていた時からで、そのときに靭帯を痛めたんだと思います。とはいえ、若いころはさほど痛みも気になることもなく、正座ができない、歩くと痛みが出るということはなかったんです。ところが、40代に一か月半くらいの入院生活をしたことがあり、その期間歩かなかったためか、退院後から痛みが頻繁に出るようになりました。
そして昨年には、ほぼ毎日整骨院に通う生活が続き、お金も時間も施術に費やしていましたが、なかなか良くならなくて困っていました。そこで、インターネットで見つけた三日月整骨院に来たのです」
町田先生「来院されたときの歩き方を見て、膝だけが原因ではないだろうなと思い、どこをきっかけに痛みが生じているのかを診ました。そこでまずは骨盤や背骨を診るとゆがみがあるため、足への加重のかかり方に左右差があることがわかったのです。青木さんの場合は左側に体が傾いているのが特徴で、これにより脚の長さにも違いが出ていました。次に荷重差が生じている足元を見てみると、特に左足が”過剰回内(オーバープロネーション)”といって内側に倒れるくせが強い状態だったのです」
2.足元と骨盤のゆがみによって膝の痛みを発症
足元にも骨盤にも背骨にも左右差がある、これがどのような膝の痛みを引き起こしているのだろうか。
町田先生「足元についていえば、かかと周辺の動きは、そのすぐ上の脛の骨の動きに連動します。よって、足元が不安定で、かかとが内側に倒れると脛の骨もまた内側に倒れてしまいます(下記イラスト左)。そのままでは足が内側に倒れてしまうので、なんとかバランスをとろうとして今度は膝から上が外に開こうとして骨盤が外に開きやすくなっていました。ここで膝のねじれが生じてしまい、膝の内側が痛くなったり、正面から見るとO脚になったりとしてくるのです。このように、青木さんの膝痛については、膝そのものに問題があるわけではないと判断しました」
青木さん「町田先生の説明を聞いて、そういうことか……と思いました。今まで膝が痛いから、膝ばかりを施術してもらっていましたが、なかなか改善しなかったのは、膝そのものが問題ではなかったからなのだとそのとき知りました。こうした詳しい説明を受けたのは町田先生のところが初めてなんです」
町田先生「また、青木さんの場合、足元だけでなく、骨盤や背骨にもゆがみがあり、骨盤は外に広がって体のバランスをとろうとしているのです。すると骨盤とつながっている大腿骨は、外側に捻じれることになります(下記イラスト中央)。その結果、下(足元)からは膝下は内側にねじれ、上(骨盤から膝上)までは外側にねじれて、膝のところで、まるで雑巾絞りをしているような状態のため(下記イラスト右)、膝まわりの筋肉や関節を含む膜組織が摩擦を起こして硬くなることで痛みを引き起こしていました」
青木さん「膝の裏側も内側も痛くて、歩くと痛いし、階段の下りは怖くて、一段一段しか下りられませんでした」
膝痛は青木さんの日常生活にも支障をきたし始める。スーパーで働く青木さんが一番つらい作業は商品棚の一番下の商品の品出しなのだとう。膝を曲げてしゃがむという姿勢がどうにもできない。そこで腰を丸めて作業をすると今度は腰が痛くなる、そんな負の連鎖を生み始めていたのだ。
青木さん「これはまずいと思いました。膝が痛くて曲げ伸ばしがしづらく、いつか歩けなくなったらいやだなと思ったんです。インターネットで、「三日月整骨院」を見つけたとき、痛くない施術と書いてあったので、すぐに来院しました。
施術は少し強めのほうが気持ちがいいという方もいるかもしれませんが、私の膝は伸びきらないし、強くもむと痛みが出るので、痛みのない施術を希望していました。初診のときは、とても穏やかな施術だったので、これで効くのかなとも思いましたが(笑)。でも施術が終わると膝が軽くなって、曲がったままの膝が伸びるんです。先生の手は魔法の手だ、と思いましたね」
町田先生「施術ではねじれた膝まわりの膜組織をゆるめることに注力しました。でもこれだけでは青木さんの症状への対応としては限界がありました。なぜなら、膝そのものだけが問題なのではなく、足の荷重の左右差や足が内側に倒れてしまう過剰回内(オーバープロネーション)という状態を改善しないことには根本的な解決にはなりませんから。つまり、しっかりと施術をしても施術台から降りてた瞬間から施術の効果が減殺されていってしまうのです。そこで提案したのが当院で扱う「Northwest Superglass®』というオーダーメイドのインソールです」
これはアメリカのNorthwest Podiatric Laboratory(NWPL)社が、足部を専門に診る足病医学の考え方をもとに、一人一人の足型を採型して作られるフルカスタムメイドの医療用インソール。青木さんの場合は、過剰回内を抑制することで、足本来の機能を最適化できるため、荷重の左右差が減り、アーチが落ちることを防いでくれる。フルカスタムメイドであるため、足の左右差が大きい方にもフィットしたものを提供することができる。
青木さん「8万円というしっかりしたお値段だったので、正直悩みました。ですから通い始めた当初は施術のみ受けていたのです。それでも痛みは7割くらい改善しました。ところが仕事の都合などで通えない日が続くと、痛みは増すばかり。これでは膝の痛みが逆戻りしてしまうと思い購入を決意しました」
町田先生「『Northwest Superglass®』を使い始めてからは、劇的に青木さんの歩き方は変わりましたね。
今までは膝のまわりの膜組織が硬いために、膝の適度な曲げ伸ばしができず踏み込んで歩けない、だから歩くときの衝撃を吸収できなくて、一歩一歩つっかえるように歩いていました。
ところが、『Northwest Superglass®』を使い足元が安定したことで、回内の程度が弱まり膝のねじれが軽減したのでしょう。またその影響で、外に広がった骨盤も矯正できていました。その結果、膝で適切に衝撃を吸収することができるようになり、踏み込めるようになったのです。
すると体は自然に落下するので床からの反力を得られてその反動で次の一歩が自然に出るようになります。こうしてとてもリズミカルに歩けるようになりました。ですから施術と『Northwest Superglass®』の合わせ技で青木さんの膝の痛みは大幅に軽減したんだと思います」
青木さん「初めて『Northwest Superglass®』を靴に入れて歩いたときは膝が痛くないことにとても驚きました。こんな感覚はもう何年も味わったことがなかったので。本当にうれしかったです。自転車も乗れるし、スーパーでの作業も快適です」
青木さん「実は母も膝が悪くて人工関節の手術をしました。手術をすると劇的に良くなるようなイメージがあるかもしれませんが、実は手術後のリハビリが本当に大変なんです。結局、母は思うようにリハビリに取り組むことができず、車いすの生活を余儀なくされました。
母のそのような様子をみてきたので、できれば手術は避けたいと思っていたときに、町田先生の魔法の手と『Northwest Superglass®』に出会えて本当によかったです。自宅から自転車で50分かけて、頑張って先生のところに通っています。
先日娘と出かけたときに”歩くの、速くなったね”って言われたときはうれしかったですね。もっと早く「Northwest Superglass®』にすればよかったと思っています。とにかく痛みのない生活が本当に幸せです」
撮影/シラタニタカシ、取材・文/峯澤美絵
お話をお伺いした方
町田結希(まちだゆうき)さん
柔道整復師、バイニーアプローチ本コース修了。三日月整骨院の院長。整形外科や介護施設、数多くのスポーツの現場でのトレーナー経験を経て2017年現職に。小学2年生から競技としてスキーをはじめ、現在も京都府代表としてクロスカントリースキーで国体に出場。趣味はトレイルランニング、華道、料理と守備範囲が広い。アロマセラピーにも精通している。
(ミカヅキセイコツイン)
院長: 町田 結希
〒610-0334 京都府京田辺市田辺中央3丁目3-10 シークビル1階
HP:https://mikazuki-seikotsu.com/
TEL: 0774-51-6957
三日月整骨院における施術の一環として用いられているNWPL社のNorthwest Superglass®
主に病院や治療院において、治療や施術のために処方される医療用のファンクショナルオーソティックス®(足の動きを最適化するための医療用足底挿板)。
NWPL社の製品におけるフラッグシップモデルであり、技術革新をリードしています。
お一人おひとりの足の特徴を把握した上で、独自のデバイスであるSmart Cast®システムをもちいて足型を採型、製作する完全フルオーダーメイド。世界にたったひとつの医療水準のサポート力を有するインソールがあなたのお手元に届きます。
足の症状に対応するために、スタンダードなものから、例えば、後脛骨筋腱機能不全症や扁平足変形といった症状に対応する特殊形状のもの、靴の種類への対応という観点からはハイヒールにも対応しています。